ヤーパフワ遺跡



皆さん、スリランカのヤーパフワ遺跡という名前を聞いた事がありますか。

 スリランカ中央部のクルネガラと西海岸部のプッタランの中間あたりにある、マーホという小さな町の近郊にあります。車を使うとコロンボから120kmぐらいですが道路事情が悪いので3,4時間かかる事を覚悟しなくてはなりません。ガイドブックには載ってはいるものの、世界遺産として有名な文化の三角地帯からは外れた場所である事と、周辺に有名な遺跡が無く観光周遊コースから外れている為に、実際に行った事がある観光客は少ないと思います。コロンボに住んでいる日本人はもとより、スリランカ人の友人達ですら行った事がある人は稀な場所です。

 ヤーパフワを有名にしている物は何かと云うと、第一にスリランカの10ルピー札があげられます。お札の裏にはある動物の石像が印刷されています。これがヤーパフワ遺跡の中心である石段の中腹にある「ヤーパフワのライオン」と呼ばれる有名な石像です。もっとも私にはライオンというよりも狛犬に見えますが。石段の脇にはキャンディダンスの原形ではないかと云われているダンスシーンが彫られたレリーフがあります。遺跡の装飾は南インドとカンボジアの建築様式の影響をうけていると云われるユニークなもので、13世紀に僅か12年間ではありますがシンハラ王国の王宮がヤーパフワに設置されていた当時の、仏教を通じた他国との交流を偲ぶ事が出来ます。

 今回私がヤーパフワを紹介したいのは遺跡だけではありません。私がスリランカで一番好きな場所であるヤーパフワロックと呼ばれる岩山を紹介したいのです。

 遺跡自体も興味深いですが小規模なもので、石段が残されている他には建物の石組みの跡があるだけです。世界遺産のシーギリヤやポロンナルワに比べると見劣りするかもしれません。整備された駐車場もなければ、立派なお土産物屋もありません。あるのは小さな管理事務所、これも小さな博物館、売店ぐらいです。遺跡前の原っぱは近所の子供達の遊び場になっていて、元気な子供達と一緒に遊べます。もちろん、お土産売りに付き纏われる事なんてありません。数人のお坊さんが遺跡を守っています。

 お坊さん達も暇とみえ、話しかえれば気軽に応じてくれて、博物館の案内をしてくれたり、紅茶を振舞ってくれたりします。他にはいつでも暇そうな売店のおじさんがいるだけですが、遺跡の裏には有名なシーギリヤロックと同じ様にヤーパフワロックがあります。
 スケジュールに余裕が有り、ヤーパフワに行く機会あったら是非とも岩山の頂上に登って下さい。頂上には王宮の建物があった跡を物語る穴が数箇所と崩れかけたダーガバ(仏舎利塔)が在るだけですが、周囲を眺め回すと多少の近代的な構造物が視野に入るものの、この遺跡が出来た当時、或いはもっと前からあったであろう景色を見る事ができます。

 ココナツツリー林の間には集落があり、田んぼでは水牛がのんびりと草をはんでいます。周囲にある低い岩山の頂上には白いダーガバが日を浴びて光って見えます。天気がよければずっと向こうにシーギリヤロックも見えます。他にもこの様な景色を見る事ができる遺跡、観光地は有りますが、ここではよっぽど運が悪くない限り、この景色を好きな時間だけ独占できます。 私はのんびりしたくなるとこの場所に行きましたが、1度日本人のお坊さんに出会った事があるだけで、近所の人達以外に観光客が登ってくる姿を見た事がありませんでした。腰をおろし、風に吹かれてのんびりしながら、昔の人が見たのと同じ風景を好きなだけ見たくありませんか?

 岩山へは遺跡を見物しながら石段を登り、ゲートをくぐったら広場を左方向に行きます。ちょっとしたジャングルを抜ければ岩山の下部に出ます。ここからは階段らしき物を利用したり、誰かが刻み付けた窪みを利用したり、斜面を100mほど好き勝手なルートを登ります。ガイドブックには、ガイドが必要だとか、急斜面で危険だとか載っていますが、急斜面の場所は一部だしここには迂回ルートもあるので、しっかりした靴を履き、両手両足を使って慎重に登れば大丈夫です。但し、多少の体力は必要です。私がスリランカにいた当時はかなり太っていた為に、途中で何度も息継ぎの休憩が必要でした。
 私の個人的な気持ちですが、一日かけてここだけの為に出かけるだけの価値のある眺めと遺跡だ思います。特にリピーターの方にお薦めです。

 スリランカに初めて行かれる方は、ヤーパフワは後回しにしてシーギリヤ、ポロンナルワなどのスリランカを代表する遺跡をご覧になった方が良いでしょう。限られた日程の中で行っても、本当に周囲には何もありません。最初はスリランカ各地を出来るだけたくさん見てもらいと思います。その上で、スリランカを好きになって頂けたら次回は是非ヤーパフワにお出かけください。