スリランカ人って?



 スリランカの事を全く知らない人から聞かれる質問の中で、多いのはスリランカってどんな国ですか? スリランカの人ってどんな人達ですか? といった事です。

 どちらも一言で答えるのは難しい質問です。スリランカに入国して初めて吸う空気の匂い、体で感じる風の心地よさ、空港ロビーの雰囲気などは感性に関わる事なので言葉では説明できません。どうか御自身でスリランカに行って体で感じて下さい。国の概略についても地図やガイドブック、インターネットなどで調べて御自身でイメージを作ってもらう事にして、今回は僕がスリランカで駐在員として過ごした2年間に感じたスリランカの人について書こうと思います。

 旅行者や研究者の方がその国に興味があって訪問するのと違って、駐在員は本人の好き嫌いに関係なくその国に赴任します。そして赴任直後から仕事をするだけでなく、否応無しにその国でその国の人達に接して生活をする事になりますから、その国への先入観や思い入れ無しにその国の人を見る事ができます。

 僕が仕事を通じて知り合った人達、我家の住み込みのメイドさんとガードマン、社用車の運転手さん、両隣家の御家族、近所の人達、その他諸々の人達との付き合いを通して感じたスリランカ人っていうのは、第一に恐ろしい程に世話好きだという事です。

 僕が外国人だったので特別だったと思われるかもしれませんが、仕事上では勿論の事、外国人の多い地域に住んでいたので外国人が珍しいと思う人はいなかったと思います。僕の周りにいたスリランカ人だけなのかもしれませんが、相手の為に何かしてあげたいという気持ちが非常に強いようです。

 出来ない事や知らない事でも、出来ると言ったり、知っていると言ったりしているうちに後に引けなくなって、あやふやな事を言ったりします。これが誤解を招いて、スリランカを訪れた多くの人達からスリランカ人はいいかげんだ、約束を守らない、お節介だと言われたりしていると感じていました。

 第二に議論好きだということです。街中で誰か一人に道順を尋ねたとします。たちまちのうちに世話好きな人達が寄ってきて、あっちだ、こっちだと身振り手振りで世話を焼いてくれます。そのうちに、道順を聞いた僕をほったらかしにして集まってきた人達がシンハラ語で何か議論を始めてしまいます。たぶん道順について話をしているのでしょうが、なかなか道順を教えてもらう段にまでたどり着かない事があります。こんな時に地図を出して聞いてみても大抵の場合は無駄になります。僕の経験では通行人だけでなくタクシーの運転手さんでさえも、地図上で現在地を正確に指せる人は少なかったです。それどころか、地図を出す事によって議論に拍車をかける事になります。

 社有車の運転手さんが初めての場所に行く時にでさえ地図なんかは見ないで、たぶん見ても判らないのだと思いますが、先ず大まかな方向を目指して走り始めます。そして走りながら、平行して走っているバスやタクシーの運転手さんに大声で道を聞きます。その方向で良ければまっすぐ行き、違っていれば方向を変えるといった具合に微調整をしながらあまり迷う事もなく最終的には目的地のある町に着いてしまいます。

 更に目的地が住所もわからないような場所でも、例えそこが町から離れた一軒屋の様な場所であっても、目的地に着くことができます。こんな時に驚くのは、スリランカが小さな国だからかもしれませんが、どこの町へ行っても彼の親戚、友達、友達の友達などがいて道を教えてくれる事です。もっとも、道を教えてもらうと同時にお互いに近況報告なんかをしていて余分な時間が掛かることには閉口します。

 スリランカの人は時間を守らないとよく言われますが、日本でも時間を守らない人がいるのと同じで、スリランカでも時間を守る人は守る、守らない人は守らないだけの事です。守らない人の割合が日本の場合よりもちょっと多いので、スリランカでは皆が時間を守らないと思われている様に感じます。

 スリランカで外国人が時間に関して注意しなくてはいけないのは、自宅に招待された時です。習慣として少し早目の時間を指定してきますが、言われた時間より少し遅く行けば良いだけの話です。そればかりか、どんなに遅くなってもその日の内に行けば歓待してくれる事は間違いありません。

 以上は僕が持っている印象なので、違った印象を待っている人もいます。また、スリランカの人に欠点が無いわけではありませんが、欠点を上回るだけの何かがあります。この何かに触れ、感じるためにはスリランカを是非とも訪問して下さい。そして、御自身が出来る限りの範囲で構いませんから、そこら辺を歩いているスリランカの人達を観察し、思い切って話かけてみて下さい。きっと、あなただけの何かを感じられますよ!