ぼくが見て感じたスリランカ紹介17

                             【バス旅行最終話          赤岡健一郎

 クリケットの試合が終わると今度は食事です。昨夜からマンちゃん達が徹夜で用意した料理だけでなく、管理人さんに予めお願いして調理してもらった御飯やカレー等を各自がお皿に盛っていつの間にか始まります。

 スリランカではカレーなど温かい料理を作り置きする事はしません。これはスパイスの香りを大事にするためです。 又、観光客向けのレストラン等では○○カレーという名前でメニューには載っていますが、一般的にはスパイスで食材を炒めたり、煮たりした料理の個々の名称はありますが、○○カレーとは呼びません。カレーの事を書き始めると長くなるので、別の機会に書く事にします。

 今回は皆で食事を楽しむという事は重視されていないようで、急いで食事を終らせて早く川遊びに出かけたいようです。それでも旦那衆はお酒を飲んで更にご機嫌になったことは言うまでもありません。奥方たちも文句を言うのを諦めたというか、見ない振りをしているようです。

 広場からお茶畑の間の急坂をぬって谷間に降りて行くと、小さな滑り台状の滝と淀みのある川に着きました。この一族は何度かこの場所に来た事があってお気に入りの場所の一つだそうで、ここでの川遊びを本当に楽しみにしていた様です。

 年配の方々は川までの坂を嫌がって広場に残ってお喋りとお昼寝です。

 川では子供と男達だけでなく女性達も一緒になって滝を滑り降りたり、水の中でボール遊びをしたり、潜ったり、水をかけあったり、水中で足を引っ張ったり、上流に探検に出かけたりと、川まで降りてきた全員が子供に戻って遊びます。特に水着に着替えるわけではなく、クリケットをしていた時の服装そのままで川に入ります。面白い事に女性達は日に焼けるのを嫌がって長袖シャツを着ています。僕からみればスリランカ人の肌の色は羨ましいほどツヤツヤした小麦色なので、それ以上には日に焼けないと思うのですが、やはり日焼けは嫌なようです。

 朝の出発が遅れたのとクリケットに熱中したのがたたって川で思う存分に遊ぶ事は出来ず、暫らくすると日が暮れてきました。今まで水遊びをしていたのだから、あらためて水浴はしなくても良いのではないかと思うのですが、スリランカの人達は清潔好きです。

 皆で石鹸を使って体を綺麗に洗って本日のお遊びは終了です。不思議な事に水遊びの時には服を着替えなかったのに、水浴の時には男性は腰巻の様なもの、女性も胸まで隠す筒状の浴衣に着替えます。

 これって結構合理的かもしれませんね。そのままの格好で坂道を登って広場に戻りよそ行きに着替えます。僕は水着を用意してきたものの、着替えを用意して来なかったのでクリケットで汗だらけになったアロハを再び着なくてはならず、情けない事に日本人は不潔だと思われた様に思います。着替えが無いのを憐れんだのか、マンちゃんの親戚の人がTシャツを貸してくれました。

 再び皆で手分けをして荷物をバスまで運び、お茶畑の管理人夫婦に見送られて帰路につきました。さすがに疲れたのでしょう、バスの前部・中央部席に座った人達は居眠りをしています。

 後部席の若者達はまだまだ元気で、さすがに歌や踊りはしないけれど、なにやら声高に話をしています。運転手さんと助手も、皆がクリケットや川遊びをしている間にバスの洗車を済ませ、たっぷりとお昼寝をしたので元気に運転をしています。

 往路は4時間もかかったというのに、帰路は寄り道が無かったので2時間弱で出発点のマハラガマに着きました。着くや否やあっという間に解散です。特に名残惜しくはないようですね、なにしろほとんど皆が何かと理由をつけてはしょっちゅう会っているそうですから。実際に、2週間ほど後にバス旅行の写真が出来上がったという理由で、コロンボ周辺に住んでいる人達が集まって宴会が催され、僕も招待されました。宴会では1枚1枚写真を回して、何がそんなに楽しいのかと思うほどの大騒ぎでした。

 今回のバス旅行に参加して、スリランカでの血縁関係の結束の固さを再認識しました。それとともに、日本での核家族化を考えさせられました。

 旅行者が今回の様なバス旅行に参加できる機会はないと思いますが、何処かでこのようなグループを見かけたら声をかけて見たら如何でしょうか。時には特別ゲストとして歓待されるかもしれません。その際には、ゲストである事と最低限のマナーは忘れない事、お金を渡すのではなく何かしらの差し入れを忘れないようにお願いします。

 差し入れは何でも構いません、何も手持ちがなければ道端でどこでも売っているキンココナツ(果汁が美味だけど1個が10〜20円程度)で十分ですし、日本の歌を歌ってあげればもっと喜ばれます。スリランカの人達は物よりも、御礼をしたいという気持ちを大切に思ってくれるからです。 


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