ぼくが見て感じたスリランカ21 スリランカの恋人たちと日傘 赤岡健一郎 今回はスリランカの恋人達の話です。恋人達といってもスリランカ国内では自由に恋愛をして恋人を持つ事が出来る雰囲気は薄く、コロンボに住んでいる若者、大学生の一部、留学経験者達は恋愛という概念を持っていますが、コロンボ以外の場所に住んでいる大部分の若者にとっては恋愛や1対1のデートは夢の様な話です。 また、結婚を前提としない恋愛も一般的ではありませんから、恋愛をするにしても男女とも相手を選ぶのに慎重になっている様です。特に地方では結婚相手は自分で見つけるのではなくて、親が決めるものだという考えが中心ですから、自由な恋愛で伴侶を捜すなんて許される訳がありません。もちろんタブーに挑戦する若者もいますが、良い結果は得られない様です。 無理矢理に双方の親によって引き離されるだけならまだ良い方です。引き離された後でも隠れて付き合っていたりすると、親戚一同から絶縁されてしまいます。スリランカでは親戚との付き合いが濃厚ですから、親戚付き合い無しに新しい家庭を作ると言うことは難しいです。 駆け落ちをするカップルも多い様ですが、国土面積が北海道の80%程度しかない上に、人間の住めないジャングル等も多いため、駆け落ち先は限られています。日本の様に人知れずに潜り込める様な大都会もありません。生活する為に必要なお金を得る機会も親戚縁者のコネ無しに捜すのは難しいことです。 更にスリランカでは親戚だけでなく友人関係、知人関係も濃厚なので、何処の土地に行ってもも誰かしら知り合いがいて直ぐに見つかって連れ戻されてしまいます。最悪の悲惨な結果として心中してしまう事もあり、新聞記事で見かける事も度々あります。 コロンボの若者が進んでいると言っても、まだまだ初々しいものです。ショッピングセンターのフードコートのような場所で若者達の集団デートをよく見かけますが、観察していると男は男同士、女は女同士で話をして盛り上がっています。ソフトドリンク一杯で何時間も粘っているのでしょうが、カップルが生まれる気配はありません。 何処の国でも同じですが、男性は女性の気を引こうと過度なパーフォーマンスをしているし、女性も何人かで男性の顔を盗み見しながらヒソヒソ話をしています。大概の場合、女性達の視線は一人の男性に集中しています、でもそれ以上にはなかなか発展していきません。 さて、首尾よくカップルが誕生すると次に問題になるのは何処でデートをするかです。ショッピングセンターの中をグルグル歩き回ったり、映画に行ったりするのは万国共通です。僕の住んでいた処から直ぐそばの、ヴィハーラ・マハー・デーウィ公園は近くにあるコロンボ大学の学生達のデートスポットです。 此処は英国の植民地時代に作られたクイーン・ビクトリア公園が独立後に名称変更された公園で、紀元前に在位していたシンハラ王朝の女帝の名前が付けられています。植民地時代にシナモン栽培が行われた地域にあるためにシナモンパークとも呼ばれ、今でも公園は広々していて、樹木が生い茂り、花壇では一年中花が咲き乱れています。 恋人達は、日本の恋人達の様に腕を絡ませたり、手を繋ぐようなことは滅多にしません。微妙な距離を保って並んで公園内を歩き廻ります。ただ日本と違うのは、木陰等で一休みする時に日傘が活躍する事でしょう。 恋人達は暑いからなのか頻繁に木陰で休みます。こんな時にどのように日傘が活躍するかと言うと、木陰に入ると通路に背を向ける格好でベンチや芝生に腰を下ろします。そして日陰であるにも拘わらず広げられた日傘の下にカップルが上半身を隠すようにして入り込みます。自分達だけの空間を確保しようとしているのでしょうか。さすがに正面に回りこんで確認した事はありませんが、人目を忍んでする事が何かあると思われます。 最近の日本では人前でも堂々と行われている様ですがスリランカでは恥ずかしげに行われていて可愛いです。僕はこの方が好きですね。このスタイルはスリランカの恋人達のスタンダードです。 前回紹介したゴールフェースグリーンで、インド洋に沈む夕日を見物する為に波打ち際の最先端にある石段の上に陣取っている恋人達も、夕日は自分達の正面側にあると云うのに日傘を背負うようにしてじっと夕日を見つめています。そして日傘の位置が少し変わって上半身が見えなくなったりします。スリランカ南部のゴールにある、世界遺産に登録されているフォート(砦)でも、砲台の跡や石壁のくぼみ等で日傘を差しているカップルをよく見かけます。日除けだけでなく、この様な用途からも日傘はデートの必需品らしいです。 外国人観光客が訪問する遺跡や名所、宿泊する高級ホテルは、スリランカの新婚さんにとっては一生に一度の新婚旅行のメッカになっています。このような場所には日傘のカップルが多くいるので、あまりジロジロ見ないで、どうか温かい目で見てあげてください。 僕が見て感じたスリランカ・目次へ TOPへ |
---|