ぼくが見て感じたスリランカ42

スリランカの世界遺産 X   ポロンナルワ


 前回は世界遺産シリーズを休ませていただき、世界大学野球選手権に参加したスリランカチームの話をさせていただきました。今回は世界遺産シリーズに戻って、7月号でお約束したポロンナルワを紹介します。

 ハバラナからポロンナルワまでは国道11号線をバスで東に約45Km、寄り道をしなければ約2時間ほどの旅になります。この辺りまで来るとポロンナルワ駅に停車する列車は1日に1本しか無い上に、駅自体が町の中心部から4Kmも離れています。駅とバスターミナルを中心に繁華街になっていますが利用者が少ない為に三輪タクシーも待っていません。鉄道好きな方も、遺跡を見物するためにはハバラナからバスを使って遺跡の傍で降りたほうが無難でしょう。

 ポロンナルワの歴史について簡単に説明しておきます。ポロンナルワには11〜13世紀にかけてシンハラ王朝の都がありました。10世紀末に南インドからの侵攻によってアヌラーダプラは征服され、シンハラ王朝はポロンナルワに逃れて11世紀後半に新しい都を興します。

 ポロンナルワでも他の都と同様に宮殿等の建設に続いて、広大な貯水池と水路を含んだ灌漑施設の建設を行いました。貯水池は当時の王の名をとってバラークラマ・サムドラと呼ばれています。現在でもこの灌漑システムは当時のままに使われ、ポロンナルワ周辺の農地を潤しています。

 水路では都のあった頃と同じく水浴をする人達の姿が見られます。ポロンナルワには多くの寺院が建設され仏教都市として栄え、ビルマ(現ミャンマー)やタイ等の外国からも僧侶が訪問していたと言われています。ところが、13世紀後半には再び南インドからの侵攻によってスリランカ島の中央部へと逃避行を繰り返す事になります。

 ポロンナルワは僅か200年ほどの運命でしたが、この間に他の都に比べて寺院だけでなく数多くの仏像や建造物を残しています。レンタル自転車で主な遺跡を回るだけでも丸一日かかります。ガイド付きのタクシーを使っても少なくとも3〜4時間は掛かるでしょう。ここで全てを紹介する事は難しいので代表的な物を紹介します。興味を持たれた方は図書館などでお調べいただくようにお願いします。因みに、町田の市立図書館に設置されている検索システムを使って、スリランカをキーワードにして検索すると50件以上ヒットします。

 先ず、右の写真@は貯水池の名前の由来となったバラークラマ・バーフ1世の宮殿跡です。建設当時は7階建てで1階には謁見の間と大広間等があり、全体で部屋数は50室以上をあったと伝えられています。現在は厚さ3mの煉瓦造りの壁が3階部分までしか残されていませんが当時の建設技術の高さを物語っています。




左の写真Aは、かつては聖なる菩提樹がこの遺跡の隣りに植えられていたというラター・マンダパヤ(菩提樹堂)。8本の石柱がそれぞれ蓮の茎の形をし、風にそよぐ茎を表し、頭頂部は蓮の花の蕾の形を表しています。


 右の写真Bはラトナギリ・ワターゲ仏塔。円形をしたポロンナルワで一番大きな仏塔で、中心にある御本尊の仏像はアヌラーダプラから遷都される以前の7世紀に建立されたと言われています。仏像手前、階段下段の左右にある石像はガードストーンと呼ばれ、今でも悪魔の侵入を防いで御本尊を守り続けています。        



 左の写真Cはガル・ヴィハーラと呼ばれる仏像群。大きな一枚岩を彫って作った仏像です。左側の立像は高さが約7mあり仏陀の一番弟子のアーナンダが涅槃に旅立つ師の傍らで悲しんでいる姿と言われています。右側が涅槃像で全長は14mあります。写真には写っていませんが。涅槃像の右奥には高さ4,6mの座仏像があります。



 右の写真Dはバラークラマ・バーフ1世の立像と言われています。不思議な事にこの石像は他の遺跡群とは離れた場所に一体だけ建てられています。高さは約2mです。



 以上が代表的な遺跡です。前述したようにポロンナルワにはまだまだ多くの遺跡がありますので、やはり現地に行かれて直接見るのが一番ですよ。

 ポロンナルワからキャンディまでの国道沿いは木彫り彫刻で有名です。驚いた事にスリランカで彫られた彫刻が日本でも活躍している事をご存知でしょうか。何かと言うと寺院や一般日本家屋の欄間を飾っている花や動物の彫刻の一部はスリランカで彫られています。僕も知りませんでしたが、何とはなしに立ち寄ったお土産物屋で冷やかしていると、店主と思われる男が近づいてきました。「日本人か?」と訊いて来ます。そうだと答えると、裏にある作業場の様な場所に連れて行かれ、長方形の枠に嵌められた木彫りを見せてくれました。

 そして棚から長い巻紙を取り出して広げて見せてくれると、何とそこには彫刻の絵柄や寸法と一緒に漢字である寺院の名前が書かれているではありませんか。この巻紙は目の前にある彫刻、すなわち欄間飾りの設計図だったのです。話を聞いてみると、この店だけでも年間に数十件の欄間飾りを彫っているそうです。スリランカ人の取り纏め役がいるらしく、この人物が設計図を持って来るそうです。スリランカ人は手先が器用なのでこの仕事に向いているのでしょう。面白い商売を思いつくものですね、感心してしまいます。読者の方の家の欄間飾りやご近所のお寺さんの欄干飾りがスリランカ製だったら楽しいですね。

 次回はダンブーラの石窟寺院を紹介します。                       (次号に続く


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