ぼくが見て感じたスリランカ40

スリランカの世界遺産W 「アヌラーダプラからポロンナルワへ」


 アヌラーダプラを後にしてポロンナルワに向いましょう。アヌラーダプラからポロンナルワまでは直線距離で約75km、バスで約3時間の移動をするのが一番効率的です。

 効率よりも鉄道だと言う方は、一度、コロンボ方向に約55kmほどのマーホーまで戻って列車を乗り換え、約100kmほど走るとポロンナルワに着きます。

 地図上で見ると二等辺三角形の長い方の辺を回る様な感じになります。手元に時刻表がないので正確には判りませんし、時刻表があっても日本の様にダイヤ通りに列車が運行される事は稀なので、乗り換えがスムーズにいくとは思えません。友人にも聞いてみましたが、全く時間の予想は出来ないとの事でした。そもそも、どんな必要があってそんなに面倒臭い事を思いつくのかと言いたげな様子でした。何と言われようが鉄道だと言う方で、マーホーで乗り換え時間を取れる方は、僕の大好きなヤーパフワ(注)を見物に行くのも一興です。この場合はマーホーまでの帰りの足を確保しておいて下さい。

 さて、本誌上ではバスを使って道中見るべき遺跡を見ながらポロンナルワへと向いましょうか。アヌラーダプラを出てジャングルの中を進み小さな町を何箇所も通過して30分もするとミヒンタレーの町に入ります。すぐに、右手に白い仏舎利塔が見えてきます。次の世界遺産候補と言われている、お釈迦様の遺髪が祀られているマハーサーヤダゴバです。

 ミヒンタレーは紀元前3世紀にスリランカに仏教が最初に伝えられたといわれる聖地ですが、1934年に発掘されるまでは忘れられた存在としてジャングルの中で眠っていました。時間に余裕がある方は2〜3時間で主だった物は見る事が出来るので、是非ともバスをおりて一巡りして下さい。

 更に30分ほど進むとキャンディとポロンナルワへ道が分かれる交差点に出ます。交差点から少し入った処にアウカナの町があります。この小さな町にあるカラーウェワ貯水湖のそばに、これも次の世界遺産候補と言われている5世紀に建てられたアウカナ仏像があります。

 岩山を彫って作られ、高さは約11.5mでスリランカ5大仏像の一つに数えられています。アウカナの仏像と貯水湖はダツーセーナ王の命よって作られました。

 実は、アウカナはシーギリヤ遺跡と密接な関係があります。ダツーセーナ王は息子であるカーシャパ1世に王位の譲渡を迫られた時に、譲れる財産はこれだけだと言って貯水湖を指差しました。欲にくらんで怒ったカーシャパ1世は父親を湖に投げ込んで殺害してしまいました。他の兄弟と臣下からの復讐を恐れたカーシャパ1世はシーギリヤロックの頂上に籠城し、新王宮を造成したと伝えられています。

 この歴史上の逸話も興味深いのですが、ここでは仏像そのものを見てもらいたいと思います。高さは約11.5mですが人間の背丈ほどの蓮座の上に立っているので更に大きく見えます。僕が行った時には風雨による劣化を避けるために、レンガ造りの囲いで頭上まで覆われていました。現在は、周囲の眺望にそぐわないとしてレンガ造りの壁は取り払われて、1600年前に建てられ時の姿に戻されています。

 スリランカ人の友人によると、風雨によって劣化するのもvery naturalなのだそうです。この辺がスリランカ人らしい考え方なのですが、世界遺産候補になるほどの仏像です。将来は観光立国を目指そうというなら、有望な観光スポットの保護には力を入れて欲しいものです。

 実際にスリランカ各地に点在する石仏の中には顔の表情が判らなくなるほど風化してしまった像もあります。アウカナ仏像は僧衣の下に隠されている体の線までを表されていて、全身を覆うように彫られている僧衣の襞の緻密さはスリランカで一番美しいと言われています。風化してしまう前に是非訪ねて下さい。

 さらに東へ30kmほど進むとハバラナの町に着きます。ハバラナは文化の三角地帯の中央にあるので、ここを拠点として各遺跡を巡る国内の巡礼者と海外からの観光客、特にヨーロッパからの観光客が多く集まります。この為に巡礼宿から設備の整ったホテルまでたくさんあるので、アヌラーダプラを出てからミヒンタレーとアウカナに寄ってこられた方は此処で一泊するのも良いでしょう。

 ハバラナの少し手前にあるジャングルに入る細い道を5〜6km入るとリディガラ遺跡があります。約1000年前までは僧侶達の修行の場として栄えていましたが、インドからの侵攻で滅びました。19世紀初めになって再発見された遺跡です。リディガラ遺跡に行くためにはハバラナで三輪タクシーを雇うしかありませんが、時間があれば是非とも寄っていただきたい場所です。

 アヌダーブラからポロンヌワに至る道筋はこのような感じで世界遺産の指定を待つばかりの素晴らしい遺跡が次々と続き、いつかスリランカ世界遺産のお遍路道として一つの大きな世界遺産にまとまるかも知れませんね。今回はポロンナルワまでの遺跡紹介になりましたが次回はポロンナルワを紹介しましょう。(次号に続く)

注:
ヤーパフワ

 スリランカ中央部のクルネガラと西海岸部のプッタランの中間あたりにある、マーホという小さな町の近郊にある。車を使うとコロンボから120km。
 スリランカの10ルピー札の裏面に「ヤーパフワのライオン」と呼ばれる石像が描かれているので知られ、石段の脇にはキャンディダンスの原形と云われているダンスシーンが彫られたレリーフがある。
 遺跡の装飾は南インドとカンボジアの建築様式の影響受けているといわれ、13世紀にわずか12間ながら、シンハラ王朝の王宮がヤーパフワにあった当時の、仏教を通した他国との交流を偲ぶことができる。
遺跡の裏には有名なシーギリヤロックと同様のヤーパフワロックがある。
   (わんりぃ/2006年11月号)

 ※「ヤーパフワ遺跡」でヤフーを検索すると、‘わんりぃ’掲載文面をそのまま見ることができる)


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