ぼくが見て感じたスリランカ紹介52  
ホテル・フランシス

 僕が贔屓にしているホテル・フランシスの話をしましょう。

 スリランカではホテルと名前が付いていても泊まるためのホテルではなく、飲食店である事が多いです。ホテル・フランシスも宿泊施設は無くただのレストランですが味は抜群です。

 店があるのはコロンボからゴールロードを約98kmほど南下したヒッカドゥワです。世界遺産シリーズで紹介したゴールまでは残り20kmほどの場所になります。ヒッカドゥワという地名を初めて耳にする方も多いと思いますが、2004年12月の大津波の際に、走行していた列車が津波の直撃を受けて押し流され大勢の方が亡くなった場所がヒッカドゥワの郊外でした。2006年12月には日本の仏教関係者によって犠牲者を追悼するために高さが約19mある仏像が現場に建てられています。ヒッカドゥワの中心街は鉄道の線路よりも海側を走るゴールロードに沿って約3Kmほどのエリアに細長く密集して形成されているために大被害を受けましたが、現在ではもとの賑やかな街並みに戻っています。 

 ホテル・フランシスの話をする前にヒッカドゥワの話をしましょう。ヒッカドゥワは最近でこそスリランカ国内でも人気の高いリゾート地になりましたが、50〜60年ほど前にはヨーロッパからのバカンス客相手のノンビリとした海辺の町だったそうです。1970〜80年代には欧米からヒッピー達(ヒッピーなんて言葉自体が懐かしいですね)が集まって、なんとヌーディストビーチまであったそうです。当時のスリランカ人は、たぶん現在でも、人前で全裸になるなんて考えられず、裸になった白人を見てさぞかし驚いた事でしょうね。現在では全裸は禁止になっていますが、時たまトップレス(この言葉も懐かしいです)のヨーロピアンをみかける事があります。1泊で宿泊料が100USドルを越える高級ホテルから1泊1000ルピー(1000円ぐらい)程度のゲストハウスまで多種多様の宿泊施設があるので、予算に応じて長期滞在を楽しむ事ができます。

 ビーチリゾートという割にヒッカドゥワのビーチは広くはありません。それなのに何故ビーチリゾートとして栄えたかといいますと、スリランカではあまり見られない珊瑚礁の群生が沖合にあるからです。この珊瑚礁がスキューバーダイビング、シュノーケリング、グラスボートに適したスポットを提供しています。

 珊瑚礁の切れた辺りから外側がサーファーにとっては良い波がくるそうで滞在費の安さもあって、世界各地から多くのサーファーが集まって来ています。最近ではプロサーファーによる世界サーキットの開催地にもなっているそうですよ。日本のサーフィン雑誌でもヒッカドゥワが紹介される事が多くなってきたそうです。僕はまだ訪れた事がありませんが、日本人が経営するサーフショップもあるそうなので、仏教遺跡には興味が無くても、サーフィンには大いに興味がある方は是非スリランカの波に乗りに来て下さい。

 もう一つ忘れてならないのが海亀の産卵地でもある事です。スリランカの西南海岸には海亀が産卵のために上陸するビーチは数多くありますが、その中でもヒッカドゥワは多くの海亀が集まるので有名です。海亀ファンの方もどうぞ亀さんに会いにスリランカにいらしてください。

 それではホテル・フランシスの話を始めましょう。僕が最初にこの店に寄ったのは仕事でゴールに行った帰り道でした。
 仕事が長引いたので、ゴールで夕食を食べてから帰ろうと言うと、会社のドライバーであり、友人でもあり、スリランカ学のお師匠さんでもあるウダヤ君が、いつもの様に自分の友人のそのまた友人だか、親戚の知り合いだか、ほとんど関係無いが何らかの関係のあるらしい人が勤めている食堂が帰り道にあると誘ってきました。ウダヤ君の推薦する店は結構怪しげな店が多く、それまでにも何度か痛い目にあっていたので、辛すぎないか?脂っこくないか?不清潔ではないか等を聞いてみました。ウダヤ君はいつものようにキッパリとこの辺りではベストの店だと答えてきました。その店がホテル・フランシスです。

 ウダヤ君の言う事を信じてヒッカドゥワまで戻ると、いつもは早朝や深夜に通るために素通りしていて気に留めていませんでしたが、欧米人を相手に商売している町だけに小洒落たレストランやサーフショップが目に入ってきました。これは期待出来るかもと思っていると、小洒落た店には停まる事もなく中心街よりも少しゴール寄りの古びたレストランにウダヤ君は車を停めました。

 1970年代半ばに創業したヒッカドゥワでも老舗の店だそうです。席に着くと早速ウダヤ君の知り合いのウェイター君がメニューを持って来ました。ウダヤ君達が近況報告をしあっているのを尻目にメニューをひろげると、驚いた事に200種を越える料理名が載っています。スリランカ料理を始めに、イタリアン、チャイニーズ、コーリアン、ウエスタンと何でもありです。注文をしていないので味は判りませんが、料理名はカネロニだとかラザーニャだとか本格的な料理名が並んでいます。日本料理が載っていなかったのは、幸いなのか残念な事なのでしょうか?

 ウダヤ君お薦めのフライドヌードルとウェイター君お薦めの海老ガーリック炒めを食べてみました。本当に美味しかったのです、今回はウダヤ君の完勝です。ガーリック炒めのソースをパンで掬い取って食べるほどでした。この店には外人客も来ますが、地元民が家族連れで来る方が多いそうです。

 海外客の味覚に迎合せずに、地元の味(激辛味)を守り続けている事が老舗の真髄なのでしょう。スリランカ、特にゴールロード沿いに旅行をされる予定の方はホテル・フランシスに是非お立ち寄り下さい。美味しい料理と共にキンキンではありませんが、そこそこに冷えたビールが待っていますよ!!!




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