ぼくが見て感じたスリランカ46

スリランカの世界遺産 [  ゴール

  今回はゴール、正確には「ゴール旧市街地と砦」を紹介します。これまで紹介してきたアヌーラダプラ、ポロンナルワ、ダンブーラ、キャンディの4件は仏教遺跡でしたが、ゴールでは仏教色は薄れアラブとヨーローッパの色合いが濃い世界遺産です。

 先ずはゴールの町を簡単に紹介しましょう。ゴールはコロンボから南へ約110km、鉄道で約3時間30分、バスで約4時間の場所にあるスリランカ南部最大の都市です。たったの110kmなのに随分と時間が掛かると思われるでしょうが、スリランカでは標準的な時間でしょう。僕自身は全く自慢にもなりませんが、早朝の空いている時間に自分で運転して1時間40分で走った経験があります。ゴールの町は半島部分にある旧市街地と、半島の付け根から内陸に広がる新市街地に分かれています。

 鉄道やバスのターミナル、商店街等は新市街地にありますが、世界遺跡に登録されているのは半島全体を囲うように建造された城壁のある砦と、その内側にある旧市街です。旧市街地では新しい建物を建設するには厳しい制約があるので、殆どが植民地時代の建物です。

 14世紀以前は小さな漁港だったゴールは、14世紀にはスパイス・宝石等をもとめて進出してきたアラブ商人によって貿易港として発展しました。そのせいか、今でも宝石商人にはアラブ系の人が多いようで、コロンボのホテル内で宝石店を営む友人の名前もハッサンさんでした。16世紀に入ると、ヨーロッパ勢がスパイス等を求めて進出してきます。1589年にはポルトガルによって最初の砦が半島先端に築かれました。1640年にポルトガルに変わってオランダが砦を支配し、城壁を拡張すると共に内側に市街地を建造しました。更に18世紀に入るとイギリスがオランダを追い出して、砦を支配するようになります。前回に紹介したキャンディ王朝の滅亡と同じ過程ですね。

 2004年12月26日のスマトラ沖大地震によって生じた津波によってスリランカも大きな被害を受けました。ゴールも例外ではなく、テレビで何度も放映されたバスターミナルでバスや人が流されていく光景は、まさにゴールのバスターミナルのものでした。

 バスターミナルは新旧市街地の境にある広場に隣接し、広場では津波が到来したのが日曜日の朝8:30ごろであった為に、恒例の朝市が行われていた事が被害を大きなものにしました。3月11日の東北関東大震災で生じた津波で町が流されていく光景を見る度に、当時の光景が思い出され、どんなに備えても自然には勝てないものかと改めて感じます。ゴールでは新市街地は壊滅的な被害を受けましたが、約470年前に建造された城壁に守られた旧市街地は若干の浸水があっただけで、人的な被害はありませんでした。城壁の高さは場所によってそれぞれ違いますが、インド洋に突き出した最先端では15m以上はあったと記憶しています。

 城壁は歩いてほぼ一周する事が出来ます。途中にスリランカ軍のキャンプがあるので、この部分は通行禁止なので一端市街地に迂回しなくてはなりませんが、キャンプの向こう側で再び城壁に戻る事が出来ます。ユックリ歩いても1時間程度でしょうか。城壁の途中にある銃眼や砲座跡からインド洋をながめると、はるか昔の大航海時代を想像する事が出来ます。もっとも、現在では航行しているのは帆船ではなくて、コンテナ船やオイルタンカーばかりですがね。

さて次は城壁の中に入ってみましょう。城壁には2ヶ所の門があります。1箇所はバスターミナルの正面にある門で現在はこちらがメインゲートとされています。せっかくゴールまで来たのですから、メインゲートの前で左折して暫らく歩いてオールドゲートを通って中に入りましょう。

 このゲートの上部にはオランダ時代に活躍した東インド会社のシンボルマークであるVOCのエンブレムが冠されています。僕には読めませんでしたが、このエンブレムには1683年を示すオランダ語も刻まれているので、約330年前のものである事が判ります。オールドゲートをくぐって中に入ると狭い道路が交差し、ポルトガル、オランダ、イギリスの各時代に建てられた教会や住居や事務所、アラブ時代のモスク、東インド会社の倉庫や事務所をそのまま使ったホテルやギャラリーなど新旧の建物が密集しています。

 城壁内で一番高い丘の上にはゴール国立博物館と1863年にスリランカで最初の西洋式ホテルとして開業したニューオリエンタルホテルがあります。ニューオリエンタルは最近になって外国の高級ホテルチェーンに買収されて、外観は変わりありませんが、内装が変わって植民地時代の雰囲気はなくなりました。

 旧市街地は城壁に囲まれた狭い場所なので、ガイドブックはバッグに仕舞って、行き当たりバッタリに歩き回りましょう。どこの土地でも同じなのですがお腹が空いたり、喉が渇いたら地元の方で賑わっている店に入って、手振りで食べたいものを注文してみましょう。言葉は通じなくても、何とかなるものです。道に迷っても、城壁を見上げれば何処かに時計台が見えます。時計台の下がメインゲートなので、安心して迷い続けて下さい。最後に時計台方向に歩けば外に出られます。

次回はシンハラージャ森林保護区を紹介します。(続く)                      


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