ぼくが見て感じたスリランカ47

スリランカの世界遺産 \  「シンハラージャ森林保護区」

 
今回はスリランカで唯一の自然遺産として1988年にユネスコに登録されている、「シンハラージャ森林保護区」を紹介します。

 シンハラージャ森林保護区(以下、保護区)はスリランカの南西部の深いジャングルの中にあります。コロンボからは宝石の街として有名なラトゥナプラを経由して約125Km、バスを2度乗り継いで約4時間30分の場所にあるクダワという小さな町が保護区の入り口になります。4時間30分にはバスを待つ時間は含まれないので実際には一日がかりの移動になります。

 バスの待ち時間を過ごす方法として、最初の乗り継ぎ地のラトゥナプラでは宝石博物館を見学したり、外国人を見かけるとすかさず寄って来る宝石の露天商を冷やかして時間を潰す事が出来ます。もちろん、ちゃんと店を構えた宝石店もたくさん有るので、宝石を購入する際には何軒か訪ねて比較して下さい。往路で品定めをし、復路で購入するのが良いでしょう。何故って、保護区内では冷静に購入するか否か考える時間がタップリあるからです。

 宝石の露天掘りも見学可能ですが、場所は町から離れているので採掘地を見学したい時にはラトゥナプラで一泊するのがお薦めです。観光客相手に宝石掘りの実演を見せている採掘地もあり、ここでは露天掘りの体験をする事もできます。体験が出来る様な採掘地は道路から見える場所にあるし、採掘人が手招きしたりするのですぐに判ります。大概の場所では、採掘人の愛想が良すぎて胡散臭く、予め仕掛けてあった原石を体験者があたかも掘り出した様にみせかけて、売りつけられる事があるので注意して下さい。

 次の乗り継ぎ地のカラワァナは小さな町なので、特に有名な物はありませんが、スリランカの田舎町の雰囲気を堪能する事ができます。必要な物はラトゥナプラのマーケットで購入した方が良いでしょう。保護区にはレジ袋等のプラスチック製品は持ち込めないので購入したら、他の入れ物に移し替えて下さい。もちろん保護区内で発生したゴミ類は各自が持ち帰る事は言うまでもありません。

 クダワには保護区の管理事務所と併設の宿泊施設があります。保護区に入るには先ず管理事務所で入場登録をすると共に入場料(US$50)を支払います。但し、管理事務所では登録をするだけで、保護区に入場するには事前にコロンボ近郊のスリージャヤワルダナプラコッテにある森林保護局で入場と宿泊の許可を取らなくてはなりません。この長い地名はスリランカの行政上の首都で、クイズ番組などで世界一長い首都名として出題されるのでご存知の方もいらっしゃるでしょう。

 保護区の面積は88Kuに及び、年間雨量が5000mmに達するスリランカに残された最後の原生熱帯雨林です。保護区内には絶滅危惧種に指定されているスリランカヒョウ、最近では少なくなった野生のスリランカ象やインドニシキヘビの他にも多くの固有種の動植物が生きています。現在(09年現在)固有種としては鳥類が142種、昆虫類43種、淡水魚53種、植物は約500種(ランだけでも50種)が確認されていますが、まだまだ未発見の固有種があると言われています。

 珍しいランや蝶、昆虫が多く見られるので世界各国からたくさんの愛好家が訪れるそうです。僕は日本からの友人を送って、管理事務所の前までは行った事がありますが、その時は時間が無くて保護区に入る事が出来ず、その後もチャンスが無いままに帰国してしまった事が残念です。友人や保護区に入った事がある人から聞いた話では。高温多湿でムシムシしている上にヒルやら蛇がたくさんいて、なかなか大変なところのようです。

 でも、見た事も無いようなランを間近で見れたり、大小色とりどりの蝶が舞っているのをみると苦労のし甲斐があったという事でした。ガイドさんに頼めば日帰りトレッキングも出来るそうなので、仏教遺跡等の文化遺産だけでなくシンハラージャ森林保護区を訪ねてスリランカの原生熱帯雨林を楽しむのも一興ですね。
 保護区内は動植物にとっては楽園なのですが、ご多分に漏れずスリランカでも保護区境界線の外側の原生林が無許可で伐採開墾されて茶やゴムの農園に姿を変えている事や、保護区内での違法な焼畑と宝石の採掘が、悪影響を与えて環境破壊が進んでいます。このために保護区内の貴重な動植物の生存が危機に晒されているのが現状です。

 野生の象が保護区から外に出て農園を襲う事も頻発し、農民が野生象によって殺されたり、野生象が殺されたりしています。何とか共存できないものかと考えさせられます。

 今回で世界遺産シリーズを終了します。


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