ぼくが見て感じたスリランカ49

スリランカのお酒U

 前回に紹介した椰子酒のラーを更に蒸留するとアラックになります。味はラーが乳酸飲料の様だったのとは全く異なります。アラックは少し甘味があり、例えるならばラム酒に燻し味が加わった様な感じです。アルコール度数は25〜40度と強めです。

 僕は単純にロックで呑むほうがアラックそのものの味わいがあって好きですが、スリランカの人達はアラックを飲む際にはコーラやソーダ等で割って飲むのが一般的です。おつまみにはココナッツにチリ・タマネギのみじん切り・砕いたモルディブフィッシュ(無発酵の鰹節)・塩とライムを和えたポルサンボル、豆の粉に塩を加えて練り油で揚げたパパダン、カシューナッツのチリ炒め等が良く合います。

 忘れてはいけないのがビールです。スリランカを代表するビールと言えばライオンビール、こってりした飲み口のライオンスタウト(黒ビール)はモンドセレクションの金賞を受賞しました。ライオンラガーもスッキリとして口当たりが良くて人気があります。

 このライオン社は1881年に創業されたアジアでも古い歴史を継ぐメーカーで、創業当時にイギリス人から学んだ製法を忠実に守っています。それにしてもイギリス人は凄いです。ライオン社の工場がある中部高原のヌワラエリアにはビール工場の他にも、アジアで最初に出来たゴルフ場(1889年創業)、競馬場、イギリス式のホテルやパブ等、暑いスリランカで故国イギリスに近い環境で快適に過ごす為には、涼しい高原地帯を開発する労を惜しんではいません。今風に言えばリゾート開発ですね。ライオン社の他にもスリーコインやカールスバーグ等のメーカーが美味しいビールを製造しているので、スリランカを訪問された際には是非とも呑み比べて下さい。

 コロンボ市内にはお酒を飲める店がたくさんあります。ホテル内の格調高いバーでコニャックやウィスキーで一杯、オイスターバーでよく冷えたワインで新鮮な牡蠣をペロリ、僕の大好きなサマーガーデンレストラン(2007年9月号参照)でホタルを相手にビールを一杯、横丁の立ち飲み屋でアラックを一杯と、ピンからキリまで多くの飲酒できるお店があります。ドイツやフレンチ、イタリアン、スイス等の欧米料理、日本を始めとしたアジア各国の料理を楽しめる店も増えて来ています。超近代的なホテルや高級レストランで飲むお酒も、勿論美味しいのですが、僕個人的には少し古めいた場所で飲むのが好きです。ゴールフェースホテル(1864年創業)のテラス、コロンボの南約12kmにある岬の先端に建つ歴代のイギリス総督の別荘であったマウントラヴィニアホテルのテラスでインド洋に沈む夕陽を眺めながら呑むお酒は時を忘れて落ちて行く夕陽に見入ってしまいます。

 ゴールフェースホテルの道路向いにあるバヴァリアンはドイツ料理の老舗でこの店で飲む生ビールも美味しいです。こんなピン(高級)な場所ではなくても好きな場所が沢山あります。大概がキリに近くどちらかと言えば薄汚い様な場所で、冷えているビールが無かったり、氷が無かったりするのですが友達やその又友達と、スリランカ料理を肴に飲むのが楽しい場所です。ただ周りの人からジロジロ見られるのが苦痛ではあります。

 コロンボの様な都市ではなく、仕事先の田舎の村で相手の自宅に招かれて夕暮れに溶け込んでいく田園風景を舐めながらゆったりとした気持ちで呑むアラックやビールも格別のものでした。大した酒の肴があるわけでは無いのですが、家族全員で持て成してくれているのが手に取る様に判って嬉しくなります。こんな時には、親戚やら隣人友人達がお酒や食べ物を持って集まり、大宴会になる事が多かったのも楽しい思い出です。

 類は何とか言うように僕の友人達も、ホテル内で宝石屋を営んでいるイスラム教徒のハッサン氏を除いて皆酒飲みばかりです。お祝い事等(本当は理由は何でも良いのです)がある毎に誰かしらの家に集まっては持ち寄った大量のお酒を飲みます。お酒の肴と食事の準備が終わると裏方にいたご婦人方も酒宴に参加し、お酒が回ってくると歌ったり踊ったりと忙しくなります。僕が駐在員でスリランカに住んでいた頃は、女性が家の外でお酒を飲む光景は、一部のセレブの方々を除いては見る事が出来ませんでしたが、最近のコロンボでは女性だけのグループでお酒を飲んでいる姿が見られる様になりました。

 コロンボ以外の都市でも飲む場所の雰囲気は同じ様なものだと思われますが、農村などではまだまだ表立って飲酒する事は憚れるようで、男達が集まってこっそり飲んでいるようです。でも、結婚式等のパーティの席では大っぴらに飲んでもいいようです。どれ位のグレードのお酒と量を集められるかによって主催者の力量が計られているようです。(続く)



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