ぼくが見て感じたスリランカ50

スリランカのお酒V

 友人の一人娘の成女式パーティーに招かれた事がありました。日本では御赤飯で祝う儀式の事です。

 友人は、奥様とお嬢さんをキャンディからコロンボよりの学園都市ペラデニヤの郊外にある実家に残し、平日はコロンボの親戚宅の一室で一人住まい、週末だけ実家に帰る生活を毎週繰り返しています。さて、この手のパーティーは事前から予定はできません。ある日突然にやって来ます。 この時も、友人からの突然の招待でした。後で聞いた話では、奥様から連絡を受けると直ぐに会社には適当な理由をつけてペラデニヤに戻り、招待者リストを作成し、旦那と奥様の役割分担を決めたそうです。決めたと言っても、そこはスリランカの事、そうは上手くいかなかった様です。その話はさておいて、パーティー当日に話を進めましょう。

 招待を受けた友人達と車に分乗し、コロンボを土曜日早朝に出発して昼前にはペラデニヤ郊外に到着しました。  パーティー会場は友人宅の1階全部と広い庭全体です。予定時間より前ですが相当数の人が集まっています。面白いのは、女性はサリーで着飾った人が多いのに対して、男性の殆どが普段着にサンダル履きな事です。

 聞けば、この人達は招待客ではなくてパーティーの準備のために集まって来たヴィレッジの人達です。女性達は普段着姿の奥様の陣頭指揮のもとでサリーを着たままで食事の準備や部屋の飾りつけに忙しく動き回っています。

 男性達は会場の設営が担当なのですが、スリランカらしく2〜3人で机を運んではタバコを吸ったりお喋りで一休み。暫らくすると椅子を運んでは一休み、皆でテントを張ったら一休み、の繰り返しでいっこうに会場の設営は進みません。奥様は頭に来たのでしょう、旦那にきつい口調で文句を言っているようです。その後も旦那をはじめとする男達は焦る事も無く同じペースで仕事を進めています。

 それでもパーティーの開始時間前には設営も終わり、いよいよパーティーがスタートです。いつの間にか旦那もスーツに着替え、奥様もサリーに着替えています。本日の主役のお嬢さんはフリルが沢山付いたドレスを着て奥の部屋に鎮座して、友達とプレゼントとご祝儀に囲まれてニコニコしています。

 旦那の挨拶が始まると、そこかしこで挨拶も聞かずに食事やお酒に手を出している輩がいます。実は僕達も開始前からお酒を飲み始めていて、旦那の挨拶の言葉は誰も聞いていませんでした。食事は主に男達が庭で、女性達は室内で食べるのが決まりのようで、怖い奥様方が室内にいるので男達は嬉しそうにお酒ばかり飲んでいます。さて、旦那がパーティーの為に今回集めたお酒はウィスキー、アラック、ビールで数は数え切れないほど大量で、台所の外にケースのままで積まれていました。

 通常スリランカの人達はウィスキーやアラックはコーラやスプライト、ソーダ等で割って飲むので口当たりが良くグビグビ飲めます。まして南国スリランカで日中の暑い時間帯の屋外ですから、より一層飲むピッチが速くなります。

 パーティーの途中から、僕は旦那のいるメインテーブルでしかも旦那の隣りに座らされました。これからが大変です。お客様がとっかえひっかえやってきては、旦那にお祝いの言葉と共にお酒を注いでいきます。困った事に隣りに座っている僕にもお酒を注ぎ、自分のグラスにもお酒を注いで3人で一緒に飲み干そうと迫ってきます。

 僕もお酒は好きなのでが、一気飲みの連続には参りました。旦那は、この地区出身の議員や村長などの有力者が来る度に玄関まで迎えに行ったり、他のテーブルの様子を見に行ったり、食事や飲み物が置かれているテーブルの残量をチェックしたりと席を外す事がだんだん多くなってきました。日本人が来ているという話が伝わったようで、準主人公の旦那がいないのに、わざわざアラックやらライオンビールを持って来て、スリランカの酒を飲んでみろと勧める人が続出するようになりました。

 いったい合計でどれほどの量のアラックやビールを飲んだのでしょうか。恐らくは本単位で数えるような量だったのでしょう。僕には記憶がないのですが友達が言う事には、僕は突然倒れて動かなくなったそうです。隣家の客室のベッドまで皆で担いで行き、寝かせてくれました。翌日の朝起きてみると、当然のごとく酷い二日酔いです。水を飲みたくて何とか台所を捜して中に入ってみると家人が驚いた顔で、シンハラ語で何か話し掛けてきます。友人の家だとばかり思っていたのに、見知らぬ婦人がいて僕もビックリです。何とか水を飲みたい事を伝え、お礼を言っているうちに話しが合わなくなってきました。僕は日曜日の朝だと思っていたのに、その日は月曜日でした。一日半寝っぱなしだったのです。無意識にトイレには行っていたのでしょうが全く記憶がありません。お酒の飲み過ぎは怖いですね。 (続く) 



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