ぼくが見て感じたスリランカ紹介61     スリランカ人の物差し・そのU



  買い物をした時にも日本とスリランカとの違いに気が付きます。日本であればその売り場の店員さんにお金を払えば、包装して袋に入れられた品物をすぐに受け取る事が出来ます。デパート等では何処か遠くにあるキャッシャーまでお金を持って行くので、しばらくの間待たされる事はありますが、概ね簡単に買い物ができます。

 スリランカでは一部のスーパーマーケットと外国人観光客相手の土産物店を除いて、商品を受け取るまでに若干時間が掛かります。「この商品が欲しい」と店員さんに伝えると、先ずこの店員さんが商品名だか商品番号だかを書いた紙をくれます。次にキャッシャーの店員さんにその紙を渡してお金を払うと、その店員さんは大きな台帳に金額か何かを記帳してからレシートをくれます。台帳に記帳している間に最初の店員さんが商品を商品渡し担当の処に持って行きます。お客さんは商品渡し担当の店員さんにレシートを見せると漸く品物を受け取る事ができます。日本なら一人の店員さんで出来る事ですが、スリランカの物差しではこれが普通です。そうそう、何をチェックするのか定かではありませんが店を出る時にもガードマンに商品とレシートを見せます。これは日本進出のコストコ(アメリカ合衆国に本店を置く会員制大型スーパー)でもお馴染みで、不正防止のつもりなんでしょうかね。

 何故、こんな面倒くさい事をするのか考えてみました。悪意に考えれば、店主が店員又はお客を信用していないので、お金を扱う部署に親族などを配置して、ネコババと万引きを防止しているのでしょうか。善意に考えれば雇用機会を増やしているのでしょうか。最近の日本でも雇用機会を増やすためにワークシェアリングという言葉をよく耳にします。スリランカでは偶然かもしれませんが以前からワークシェアリングをして、最先端の労働環境を作っていたのかも。だとしたらこれは凄い!

 ただしスリランカは社会主義国家なので、最低賃金が厳格に守られています。ワークシェアリングをしても時給は同じなので、働いた時間だけ賃金を貰えるので合理的です。この最低賃金は周辺のアジア各国に比べてかなり高めに設定されています。この最低賃金が足枷になって、海外からの投資が周辺国に比べて少ない原因です、ジレンマですね。

 前述したように、意外に知られていませんがスリランカは社会主義国家なのです。正式な国名は、英文表記ではDemocratic Socialist Republic of Sri Lanka、日本語表記では、スリランカ民主社会主義共和国です。1948年に、英国からイギリス連邦セイロン自治領として独立しました。1972年にはイギリス連邦からも独立して元々の国名であるスリランカ共和国になりました。ところが何故か1978年にはスリランカ民主社会主義共和国に改称されています。この経緯は興味がありますので、いずれ調べてみましょう。

 思い返してみますと駐在員としてスリランカに住んで居た頃にも、大学生、公務員、工場や建築現場で働いている労働者等がしょっちゅうストライキ騒動を起こしていました。社会主義国家なので労働争議が多かったのですね。大学が、半年〜1年間も、学生と教師が一緒になってストライキをやってみたり(スリランカの大学はすべて国立大学なので、教師は当然公務員です)、公営バスの運転手がストライキを実施すると一般人が喜んでクリケット場が急に混んだり、役所に行ったとしても会いたい人は目の前にいるのに、その本人から今日の午前中はストライキなので午後からもう一度来てくれなどと言われる程度の緩い社会主義でした。ゲートには何やら主張を書いた檄文のようなものが張られていますが、労働者のピケラインがあって、それに警察隊が対峙しているような厳しさは滅多にありませんでした。

 話を元に戻します。更にプレゼント用に包装してもらうとなるともっと大変です。大概の店には包装紙を置いていないので、別の店で同じ工程を繰り返して購入した上に包装してもらう作業が加わります。日本ならば、アッと言う間に包装してもらえますが、スリランカでは、四苦八苦した挙句にセロテープだらけになって包装されてくる事が多いのです。たまには角の辺りから中身が見えたりするのは愛嬌というものでしょうか。でも、目の前で四苦八苦しているのを見ているので、ボホマ イストゥーティ(シンハラ語:「どうもありがとう」)と言うほかありません。どうやら1枚の包装紙を全部使って、折ったり、畳んだりして包装するのが苦手なようです。もう一つの理由は包装紙を出来るだけ大きく余りを残して、お客さまに渡すのがサービスと考えているような節があります。スリランカでは、まだまだ綺麗な包装紙は貴重なのです。そういえば、その昔、僕の母親も○越や高○屋、伊○丹等の包装紙を綺麗にほどいて再利用しようとしていたのを思い出しました。結局は使い道が無くて押し入れに山ほど溜まっていましたけどね。お祈りをする時の話などは次回にします。(続く)    


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