ぼくが見て感じたスリランカ紹介56       植物園・その3


 前回はヘラナシゴダ植物園とハッガラ植物園の話をしました。今回は仏教関連遺跡・世界遺産を除くと、スリランカでも屈指の観光ポイントではないかと密かに思っているペラデニヤ植物園と周辺の話をしましょう。

 ペラデニヤ植物園はキャンディ中心部からコロンボ方向に6.5kmほど戻った場所にあります。バスに乗れば10〜15分ぐらいで植物園の正門前に着きます。スリランカ最長の川であるマハベリ川がU字型に曲がっている箇所の、U字の内側ほぼ全てが植物園になっています。植物園の総面積は約70haあり4000種類以上の薬用及び鑑賞用の植物が集められえています。

 もともとは14世紀にキャンディ王朝によって造営された王室庭園だったものを、1821年に英国によって植物園として作り直されました。キャンディ王朝が英国によって滅ぼされたのは1815年なので、スリランカが植民地化されて直ぐにペラデニヤ植物園は出来た事になります。

 正門から入って直ぐ右側にあるスパイスガーデンが園内探索のスタート地点になります。ここのスパイスガーデンは、植物園シリーズの最初に紹介した小規模なものとは違って4000本以上のスパイスが集められています。スパイスは、当初は欧州各国にとって薬用植物と考えられていたので、当植物園では薬用と分類されています。

 色々と見ものはありますが、日本人観光客に最も人気があるのはジャワビンローの大樹です。あの〜木、何の木でおなじみの○○製作所のCMに出てくる大樹にそっくりです。本物はハワイのオアフ島にある、モアナルアガーデンズという公園にある「モンキーポッド(ねむの木)」なのですが、此処のジャワビンローは本当によく似ています。友人やお客様を案内してこの植物園に来た際に、冗談で「実は、あのコマーシャルはここで撮影されたんですよ」と言うと信じる方がいるほどです。現地の方や他国の方はあの有名なCMを知らないので、何で日本人はこの大樹の前で、はしゃいだ上に記念撮影をしたがるのか不思議がっているでしょうね。

 次に人気のあるのは記念樹木園です。最も古い樹木は1875年にエドワード7世によって植樹された菩提樹だそうです。1981年に日本の現天皇陛下がスリランカを訪問された際に植樹された樹木もあります。植物園を訪れた各国の著名人によって植樹された樹木もたくさんあり、それぞれに記念プレートが付けられています。他にもヤシやラン・竹・シダのコレクション、大王ヤシの並木、フラワーガーデン等が広大な敷地内に点在していて見どころ満載です。

 入場料は94年版では大人がRs. 50 (Rs=スリランカルピー)子供と学生がRs. 25、車がRs. 25になっています。思い出してみると初めてペラデニヤ植物園を訪問した時は車に乗ったままで園内を1周出来たので楽ちんでしたね。02年版では大人がRs. 150、子供と学生はRs. 75、車はRs. 65です。ところが11年版では大幅に値上がりして大人Rs. 600、子供と学生Rs. 300になり、車の乗り入れは出来なくなったようです。内戦後の物価高騰がここにも表れています。この植物園はキャンディ周辺の若者たちの恰好のデートスポットだっただけに、この大幅値上げは影響大でしょうね。

 植物園の周囲に目を移してみると、南側にはスリランカで一番古い(1942年設立)大学のペラデニヤ大学があります。1942年設立で最古というのは意外と思われるでしょう。英国の植民地時代にはスリランカ国立の大学は設立出来なかったからです。

 コロンボ大学はペラデニヤ大学よりは歴史が古いのですが、ロンドン大学の分校として設立されたので、スリランカの人達からはスリランカ固有の最古の大学としては認められていません。第2次世界大戦中の1941年に英国は大戦の終結後にスリランカが独立することを約束しました。教育関連者達は喜んで初の国立大学設立の準備を始め、その翌年にはペラデニヤ大学が設立されたのです。

 構内には植民地時代の建物が今でも数多く残されて重厚な雰囲気が残されています。古いだけではなく、日本の無償援助事業で新しい歯学部棟が建設されたりして近代化も進められています。学術の熟成度、入学試験の難易度もコロンボ大学と並んで最高ランクにあります。

 スリランカでは中学生に対して行われるO(ordinary)レベル試験で最初のふるいにかけられ、さらに高校生に対して行われるA(advance)レベル試験で大学受験資格を得ることが出来ます。Oレベル試験で上位に入らないと普通高校には進学できないので、この時点である程度将来が決まってしまいます。更に普通高校に行ってもAレベル試験に備えて塾通いするのが常です。Aレベル試験の上位者にペラデニヤ大学やコロンボ大学の受験資格が与えられます。スリランカの学歴偏重主義は日本以上ですよ。

 植物園正門の道路向かいには、僕がこのエリアで贔屓にしているペラデニヤレストハウスがあります。ここでのお薦めは、生ビールとチキンブリヤーニですね。ヌワラエリアが近いので美味しい生ビールがいつでも用意されていて、道路越しに見える植物園の緑を眺めながら飲む生ビールの味は格別です。そして食事兼オツマミとして最高なのがチキンブリヤーニです。

 よく洗ったお米に、鶏肉を各種スパイスと玉ねぎで炒めカレー味に味付けしたものを加えて、チキンストックで炊きあげた米料理です。レストランによって味付けは様々ですが、この店のものは味付けが濃くて僕好みの一品です。本当に美味しい〜ですよ。他にはカシュウナッツをレッドチリで炒めたデヴィルナッツもいけますね。折角キャンディにいらした方は、植物園に寄る時間がなくても、コロンボへの帰り道に寄り道してでも食べてみる価値があると、僕は断言しますね。 



僕が見て感じたスリランカ・目次へ     TOP