ぼくが見て感じたスリランカ紹介57       ウミガメとフロアマット


 御存じのようにスリランカは国土を海に囲まれています。このために国内各地の砂浜にウミガメが産卵しに上陸することが知られていました。

 ウミガメは毎年ほぼ同じ場所に上陸するので、以前は地元の人に聞けば簡単に産卵を見学することが可能でした。最近では、近海の海洋汚染、スリランカや近隣国から流れ出したビンやプラスチック類、生活ゴミなどの漂流物、観光開発によって生じる騒音や人工光、観光客による産卵場所の踏み固めなどの影響で産卵地が減ってきたと言われていたところに、2004年12月のスマトラ沖大地震による大津波によって海岸へ流れ着いた漂着物の放置等で、海ガメの上陸地が更に減ってきているそうです。

               ↓フロアマットの作り方:右手に持っている金属の棒でガンガン叩いて目を詰めて、
                 マットの形を整えていきます。


 僕が駐在しているころには無かったのですが、2000年代に入って何か所か産卵したてのウミガメの卵を移植し孵化させて、海に戻すプロジェクトが始められています。昨年見た「世界の車窓から」というTV番組の中でも南海岸のゴールロード沿いにあるコスゴダのウミガメ保護プロジェクトが紹介されていました。僕も、2001年6月にスリランカを訪問した際に、コスゴダよりも少しコロンボ寄りの観光地であるベルワラの近郊にあるウミガメの保護施設を見学したことがあるので、今回はこの話をしましょう。

 先ずはウミガメの豆知識から始めましょう。僕は知りませんでしたが、調べてみたらカメは爬虫類カメ目に属していました。爬虫類というイメージが無かったので驚きましたね。世界中に約300種のカメがいる中でウミガメはアカウミガメなど8種類です。1種を除いて絶滅危惧種に挙げられています。スリランカ近海にはアカウミガメ、アオウミガメ、タイマイ、ヒメウミガミ、オサウミガメの5種類が生息しています。

 2001年のスリランカ訪問は、日本でも売れるスリランカ製品の発掘が主目的でした。ジャフナ旅行に一緒に行った友人のカルナラトネ君がガイド兼通訳で2週間ほどスリランカ各地を走り回りました。カルナラトネ君が以前勤めていたホテルのそばに、椰子の葉の繊維を使ってフロアマットを製造・販売している工場があるというのでベルワラに行きました。この工場から2、3分のところに、このウミガメ保護施設がありました。当時のスリランカにしては立派な施設で海岸線から数十メートル離れた場所に、フェンスに囲まれた敷地内に小さな事務棟と、砂浜を仕切って作られた孵化場、孵化した子ガメを育てる水槽等が設置されていました。

 敷地内にいた初老の男性に、見学をさせて貰いたいと声をかけると、扉を開けて迎え入れ施設の説明をしてくれました。施設の運営はスリランカの自然保護NGOが行っているが、資金は主にヨーロッパの篤志家からの寄付で賄われている様です。

 孵化させて海に放流するまで様々な苦労があるそうですが、此処で説明するのは省略します。ただ印象に残ったのは、魚や鳥などから捕食されない程度の大きさまで水槽で育てから放流するのは、ウミガメを守るためには必要なことだが、自然界で生き残るための術を獲得する機会を奪っているといった事です。

 最近聞いた話では子ガメが親ガメになるまで生き残るのは1000匹の子ガメのうち1匹程度だそうです。僅かばかりの寄付金を渡して施設を離れました。尚、この施設は大津波で施設が流されてしまいましたが、現在は再建されているそうです。
 工場に戻って、今度は椰子の葉の繊維で作るフロアマットの製造工程の見学です。太目に紡いで様々な色に染められた繊維を金属の棒の間に絡めて、これまた金属の棒で叩いて目を詰めて形を整えていきます。ずいぶんと乱暴な作業ですが、繊維を触らせてもらって納得しました。繊維は固くて、ゴワゴワしていて柔(やわ)に扱ったら形をつくれないでしょう。最初に長方形の部分を作り、次に曲線部分を手作業で作ります。

 町中のお土産屋で見ると、象の図柄の物が多いのですが、此処ではウミガメや魚の図柄のフロアマットも作っています。きっと隣のウミガメ保護施設と海岸を訪問した人がお土産にするのでしょうね。工場の人達はフロアマットとして作っているし、スリランカ人の家を訪れると玄関に置いて靴底の汚れ落としに使っているのを見かけます。

 僕の目から見ると、フロアマットとして売るのはもったいなさすぎます。壁に掛けるタピストリーや装飾品として売る方が高く売れると思うのですが、カルナラトネ君に聞いても、安価な椰子の葉の繊維なんかで作った物は高く売れる訳がないと信じているようです。本当に欲の無い人達ですね。

 サンプルとして購入したフロアマットを持ち帰って、フリーマーケットで売ったら結構良い値段で即売でしたよ。

         




← 壁に完成したフロアマットが飾られています。手作業なのでそれぞれの色具合と大きさが違うのがよくわかります。右側のシャツの男性がカルナラトネ君です。左側奥に糸を絡ませる金属の棒が見られます。











→反対側の壁に飾られているウミガメと魚のフロアマットです。  ウミガメの目つきが怖いですね。



←我が家に残しておいた魚 の形のフロアマット測ってみたら、口先から尻尾まで約90cmあった。








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