ぼくが見て感じたスリランカ紹介59 スリランカ濃厚ヨーグルト 今回は水牛のミルクから作る濃厚なヨーグルトの話をしましょう。日本では水牛のミルクといえばモッツレラチーズが頭に浮かぶと思います。僕なんかはトマトの赤色と白いモッツレラチーズの配色、よく冷えたワインまで浮かんできます。 スリランカで作られているヨーグルトは英語ではカード、シンハラ語ではミーキリと呼ばれ、スリランカの伝統的なデザートです。ミーキリは濃厚な上にクリーミー、水牛のミルクの味というか匂いまでが強烈に残り、更に酸味の強い素朴なヨーグルトです。スリランカの人達はミーキリの上に椰子の花蜜を煮詰めて作られるキトゥルハニーをたっぷりとかけて食べます。キトゥルハニーは蜂蜜ではありませんがハニー又はパニとも呼びます。キトゥルハニーをさらに煮詰めるとハクルと呼ばれる黒糖に似た食材になります。 ミーキリの主な産地はスリランカ南部の穀倉地帯です。この地帯では現在でも田を耕すのに多くの水牛が飼育されています。田起こしを行うシーズン以外は荷役とミーキリの原料作りが水牛の主な仕事のようです。そのためにミーキリの原料になる水牛のミルクも豊富です。 牛乳に比べてビタミン、鉄分、乳脂肪が豊富なので牛乳のヨーグルトよりも濃厚になるのだそうです。作り方は牛乳のヨーグルトと同じく水牛のミルクに菌を加えて発酵させるだけです。違うのは素焼きの壺や少し深みのある素焼きの平鉢を容器に使う事でしょう。素焼きの容器の利点は、多孔質なので気化熱で冷やされる事と、水分がほどよく抜けて濃縮される事のようです。また、素焼きの容器は使用される前に燻蒸して消毒します。燻蒸される時の香りがミーキリに残っているのも美味しく感じられます。ウィスキーの樽の燻蒸香と同じですね。 僕のミーキリ初体験は、いつもの事ながら運転手のウダヤ君と南部のプロジェクト予定地へ視察に行った時でした。南部のマータラという町に近づくと、道路の両側にある商店や屋台に山積みされた、新聞紙の小片で蓋をされた素焼きの壺や、軒先に何段も重ねて紐で縛って吊るされている平鉢が目につくようになりました。ウダヤ君に聞くとヨーグルトだというではありませんか。 さっそく食べてみようと思ったのですが、僕の頭の中にある日本の物差しで考えると、乳製品は冷蔵庫の中に保存されている物で、スリランカのように暑い国では常温で保存できる訳がないという思いがわいてきました。容器にしてもヨーグルトが入っているとは思えません。ヨーグルトは聞き違いだと思い再度聞いてみると、やはりヨーグルトと言っています。 スリランカの人達が食べているのだから、僕が食べられない訳がないと思い試しに小さな壺に入ったミーキリを買ってみました。買った時に貰った平たい棒アイスの芯のようなもので口に入れてみました。感触は固めのプリンか、溶けかかったアイスクリームでしょうか。酸味が強くてなかなか強烈な印象の味です。その時には水牛のミルクのヨーグルトなんて事は全く知りません。また、ウダヤ君もあえて教えてくれなかったようです。きっと僕の反応を楽しみにしていたのでしょう。さすがに僕のスリランカ学のお師匠さんです。 僕が何口か食べてから、スリランカの伝統的な製法で作ったミーキリという水牛のミルクから作ったヨーグルトだと教えてくれました。ウダヤ君に言わせるとそのまま食べた方が美味しいのだが、最近ではスリランカの人達も砂糖をかけたり、キトゥルハニーをかけたりして食べるようになったのだそうです。近所の商店で砂糖を買って、かけて食べてみるとだいぶ食べやすくなりました。なんとか食べ終わって記念に素焼きの壺を持って帰ろうとすると、壺はその場で叩き割って土に戻すのが作法だそうです。エコですね。 冷やして食べたらもっと美味しいのでは、とウダヤ君に聞いてみるとコロンボのスーパーマーケットでも売っているから試してみたらどうだと言われました。それまでは気が付きませんでしたが、後日スーパーマーケットに行ってみると、牛乳ヨーグルトと並んでプラスチックケース入りのミーキリがあるじゃありませんか。購入して食べてみましたが、冷やすと、独特の風味が薄れて牛乳ヨーグルトとあまり変わり映えしません。他の店でも素焼きの容器入りのミーキリが冷やされて売られていましたが、美味しくありませんでした。それからは南部に行った帰りには必ずミーキリを買って帰るようになりました。僕は常温のミーキリにちょっとだけキトゥルハニーをかけて食べるのが好きになりました。やはり現地の食べ物は現地の食べ方が一番美味しいですね。 今年も9月8日(土)〜9日(日)に代々木公園でスリランカフェスティバルが開催されます。素焼きの容器に入ったミーキリはありませんが、キトゥルハニーとハクルは入手できます。最近は流通技術が向上したので、もしかするとプラスチック容器入りのミーキリがあるかもしれませんよ。スリランカ料理店や民芸品店、食料品店、アーユルベータなどスリランカを肌で感じる事が出来る店が勢ぞろいします。お酒の好きな方にはスリランカのビールやアラックという地酒の飲める店も ありますので、是非ともいらして下さい。 僕が見て感じたスリランカ・目次へ TOPへ |
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