ぼくが見て感じたスリランカ紹介60     スリランカ人の物差し



 スリランカ人の物差しと言っても、なにも長さを測るメジャーの話ではありません。世界中どこに行っても1メートルは1メートルで同じです。スリランカだけが、90cmでも、120cmでも1メートルとしてOKという訳ではありません。スリランカで生地を1メートル買おうと思えば、1メートル分しか売ってくれないことは当たり前の事です。

 今回は頭の中の感覚的な物差しのズレの話をしてみます。物差しのズレはアジアを歩き回っている方には判って頂けるでしょう。海外旅行に日本の尺度(物差し)を持っていかれると、戸惑うことが多々あります。また、日本ではこんな簡単な事が、何でこんなに面倒くさい事になるのかとウンザリすることがあります。今回は、日本とスリランカの物差しのズレを中心に書いてみようと思います。

 まぁ、シンガポール・マレーシアあたりを除いてアジア地域ではどこでも当てはまると思いますので、「私の好きなあの国ではこんな事がある」と言う方も多いと思いますが、私の立場ではスリランカを例にして話を進めていかざるを得ないことをお許しください。

 一番身近な例を挙げるとすると時間の事でしょう。もちろん、スリランカでも1時間は60分である事には変わりありません。でも、僕が駐在していた時には、某国営放送局が朝6時の時報を告げた直後に、他チャンネルに回してみると6時の時報前だったなんて事もあったので、両TV局間の時報の何秒かのズレは一日中残る訳です。スパイ小説ではありませんが、国家的謀議をするために時計を合わせても、ずれる事があって謀議が失敗するかもしれませんね。

 さて、日本からの旅行者の方が最初に直面するのが時間感覚のズレでしょう。日本から持ってきた頭の中の物差しでは、1時間もあればこれぐらいの事ならば2,3件は出来るだろうと考えます。ところがスリランカではそんなに簡単に物事が進みません。特にスリランカの人達の能力が低いという事ではありません。「急いで、効率良くやる」という概念がスリランカ人の意識の中に薄いのです。日本人が、日本ならば「この様にやるのに」とあれやこれや考えて、「さっさとやってくれ」とイライラしても仕方がありません、何故ってこれがスリランカのスタンダードだからです。

 周りのスリランカ人の様子を観察しながら、日本との「物差しのずれ」を認識した上で、時間感覚をスリランカに滞在される間だけでも「スリランカの物差し」に調整するとイライラする事が減るでしょう。

 銀行や両替商で両替をするのであれば、係員は慣れているのでスムースに手続きが進みます。慣れているとはいってもPCで簡単に出た金額を分厚い台帳に手作業で記帳する等驚くべき事はあります。でもそれは窓口に着いてからの話で、窓口に立つまでに相当の時間を並んで待たなければなりません。スリランカの人達にとっては、並んで待つというのは至極当たり前の事なので、彼らの時間の物差しでは、長時間並んで待つのは普通の事です。並んでいる間にお喋りの花がそこいら中で咲いて待つことを楽しんでいるようでもあります。隣の大国のように並んで待っている列が崩れて修羅場になるようなことも稀です。たまには有りますが・・・。

 ましてや、スリランカ人の友人に両替や立て替えた費用の精算等をお願いすると、とんでもなく時間が掛かる事あります。僕の観察では、原因は当日の通貨レートを確認するのに手間がかかるのです(新聞に掲載されているのは前日のレートで、直近のレートは銀行に問い合わせないと判らない)。前日レートでも構わないと言っても、普段はアバウトなスリランカ人が友人である日本人(僕の事です)に損をさせてはいけないと言って、むきになって直近のレートを求めます。更に、最初に計算した金額と検算した金額が違うので、もう一度検算したら、また違う金額になって時間が掛かる上やる気を失ってしまう様なケースも多くあります。ここで催促すると、焦って余計に時間が掛かることもあるのでしばらく待つと良いです。

 計算するのを忘れた訳では無く、自分の度重なる計算ミスに動揺し落胆しているだけで、落ち着けばちゃんと計算してくれます。両替等お金に関することは、日本での必要時間と比較せず、充分に時間に余裕をもって臨むのが良いです。相手は善意の塊のようなスリランカ人で、僕らに良かれと思ってしている事が裏目に出る事が多いだけです。 必要時間を長めに見込んでいて、たまたま早く用が済めば付近を散歩でもする余裕ができますよ。(続く)
    


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