ぼくが見て感じたスリランカ紹介66       

路上で出会った動物たち



   前回にも書いたように、仕事の都合で幹線道路から外れた田舎道を車で走る機会が多くありました。その度に色々な動物と出会います。ものの本によると、スリランカには86種類の哺乳動物、427種類の鳥類、無数の爬虫類が住んでいるそうです。スリランカ固有種も多いようです。

 路上では以前にも何度か紹介した野良牛や野良犬、野良猫には嫌と言うほど会えます。今回は違った哺乳動物を紹介しましょう。

 スリランカの国旗は、赤地に黄色で短刀を持ったライオンが描かれています。有名なシーギリア遺跡に登る階段の入口にも巨大なライオン像が建てられていたと伝えられています。ところが実際にはスリランカにはライオンはいなかったそうです。伝説上の生き物だったのですね。そこで、スリランカの哺乳動物の代表と言えば象です。

 今月、東京で開催された日本スリランカ国交樹立60周年の記念行事に出席するために来日された、マヒンダ・ラジャバグサ大統領がプレゼントとして持ってこられたのも、2匹のスリランカ象でした。12日に多摩動物公園に寄贈するセレモニーがあったばかりです。

 象はスリランカを代表する動物ですが、普段はジャングルの奥に居て、最近ではスリランカでも野生の象に道路で出会う事は少なくなりました。1970年代から続いたLTTE(註)との内戦の主戦場がスリランカ北部地域だったために、北部に住んで居た農民が大量に南部に移住しジャングルを開拓したのも一因とされています。僕も赴任期間の2年間でたったの一度しか出会う機会はありませんでした。

 いつもの様にウダヤ君と一緒に田舎道を走っていると、突然ウダヤ君がかなり離れたジャングルの方向を指さして「ワイルド・エレファント」と叫びました。ジャングルの少し手前の道路の脇で子連れの象が何か食べています。飼育されている象は多くいますが、前述のように野生の象は減って来ています。スリランカ人のウダヤ君にしても久し振りに出会ったそうです。スリランカ人の間では、野生の象に会うと運勢が上向きになると言われていて、非常にラッキーな事だそうです。

 車を停めて象の動きを観察していると、次々に走ってきた車も停まって同じように観察を始めました。大きな音を立てて、象達が驚いてジャングルに戻らない様に、少しでも長い時間象を見ていられる様にと、皆申し合わせた様に静かに見守っています。10分ぐらいは見ていられたでしょうか。残念ながら反対方向からカーブを曲がりながら、オンボロバスが大きなエンジン音を響かせて登場すると、象達は急いでジャングルに駆け込んでいきました。皆がバスの運転手に文句を言うと、ちょうどカーブを曲がっていたので運転手は象に気づいていなかったのでしょう。何で文句を言われているのか判らない様子です。理由が判ると、運転手だけでなく乗客たちもひどく落胆した様子です。

 自分達も野生の象を見たかったのでしょう。このようにスリランカの人達は野生の象をとても大事にしています。何らかの理由で親象から離れてしまった子象を保護するために、キャンディの西約30Kmのキャーガッラの町に「象の孤児園」が設けられています。此処で一日に2度づつ行われる、大きな哺乳瓶でミルクを与える食事時間と、近くの川まで集団で行進をして水浴びに出掛ける時間が名物になっていて、多くの観光客を集めています。子象は成長すると各地のお寺等に引き取られていきます。

 今度は田舎道で数多く出会う鳥の話をしましょう。カラスを除いて孔雀が最も多く出会う鳥です。羽を広げていない時には目立たないのですが、車の前方で突然羽を広げると、その青藍色の羽の見事さに見とれてしまいます。雄が羽を広げるのは雌に対する求愛行動だと習ったのですが、スリランカの孔雀は雌がいなくても羽を広げてくれます。サービス精神が旺盛なんでしょうかね。孔雀は路上だけでなく、スリランカのいたる所で見られる鳥で、仏教の信仰の対象とされているために、各地のお寺で大切に保護されています。また、一度などはコロンボ市内にあるデヒワラ動物園の園内でも野生の孔雀が羽を広げている姿を見かけました。園内には籠の中で飼育されている孔雀もいるというのに、可笑しな話です。

 路上で見かける爬虫類というと、代表はリクオオトカゲです。1メートルを超える巨体が突然、目の前をのっしのっしと横切ったりするので驚きます。水の少ない場所を好んで棲んで居るそうで、道路脇の空の側溝が大好きな場所だそうです。リクオオトカゲにはさすがに毎回は会えませんが、たまにみると恐竜の末裔かと思われるような容姿に見入ってしまいます。

 その他には野生ではありませんが、大道芸人が連れ歩いているヤマアラシやコブラ、猿などは路上で頻繁に会う動物です。                       (次号に続く)
   


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