ぼくが見て感じたスリランカ紹介67      

スリランカ 懐かしの味


 スリランカで懐かしの味と言うとカレーが先ずは頭に浮かぶのですが、これは店によっても味は千差万別で、どこか1カ所の店の味が懐かしいと言うのは難しいです。同じように、友人宅で御馳走になったカレーも、それぞれの家庭の味があって全部の家のカレーが懐かしい味と言えます。昨年6月に紹介したミーキリ(水牛の乳から作るヨーグルト)や、カシューナッツなどのナッツ類をとんでもなく辛く味付けしたスナック菓子のデヴィルド・ナッツも懐かしい味です。今回はこれらのスリランカ由来の懐かしい味ではなく、コロンボにあるスリランカ料理レストラン以外から懐かしいレストランの味を探してみようと思います。

 先ず、コロンボのレストラン事情を簡単に説明してみましょう。スリランカは長年に渡って続いたスリランカ政府とLTTE(タミル・イーラム解放のトラ)との抗争等もあって、隣国のインドとモルディブに比べると日本人にとっては観光地・リゾート地としてはポピュラーな国ではありませんでした。外務省から渡航注意喚起情報なんていうのが出ていたので仕方のないところですが、これは日本人にとってだけの事で、数か月に1度はコロンボ市内で自爆事件が起こり、多くの死傷者が出ていた1990年代でもヨーロッパから多くの長期バカンスを楽しむ客が来ていました。植民地時代からヨーロッパ人にとってスリランカは、一度は行ってみたいバカンス地の一つだったそうで、揉め事には我関せずのようです。

 宗主国の英国からのバカンス客を除くと、ドイツからのバカンス客の数が最も多く各地にドイツ村と呼ばれるドイツ人ばかりが集まる特定のエリアがあります。ドイツ村以外にも特定の国の人が集まる場所が何カ所かあり、今は閉鎖されましたが、以前はヌーディストビーチまでありました。これらのバカンス客目当てに、コロンボ市内には英国、ドイツ、フランス、イタリア等のヨーロッパ料理の本格的レストランが数多くあります。変わったところではCheese Swissというスイス料理の店があります。ここでは一年中暑いスリランカで熱々のチーズフォンデューを食べる事が出来ます。此処は予約を取って行かないと、もともと席数が少ない事もあって満席の事があるほど流行っています。ゴールフェースホテルの道路向かいにあるBavarianというドイツ料理の店は、スリランカに住んで居る日本人にはビアホールのような感覚で利用されていて、行けば必ず誰かしらに会えます。

 日本食レストランも何軒かあるのですが、驚くほど多いのは中華料理と韓国料理の店。ホテル内の店は観光客相手ですが、圧倒的に多い一軒家レストランは観光客相手というよりは在住中国人・韓国人が相手です。衣料品等の製造工場や建設会社の経営幹部・技術者など両国の方々がご家族と一緒に大勢スリランカに住んでいます。その他インド・タイ・インドネシア等アジア各国のレストランも揃っています。

 数あるレストランの料理の中で僕が一番懐かしく感じる味は、錦城レストラン(中華料理)のチリガーリックヌードルですね。この店はコロンボの中心から少し外れた場所にあるので、客層は中国人、近隣のスリランカ人、各国駐在員といったところです。料理の名前から判るように、単にチリとガーリックで炒めた焼きそばなのですが、なかなか強烈な料理です。この料理が懐かしいと言うか怖いのは、料理が運ばれて来て卓上に置かれて湯気が顔にかかっただけで、涙が出てくるところです。麺の色は真っ赤で口に入れるとチリの辛さと、ガーリックの刺激で鼻腔内が麻痺し、次に頭髪の間から汗が流れ出てきます。慣れるとこの辛さと刺激が堪らなく、ビールがより一層美味しく飲めます。この文章を書いているだけで、舌先に辛さがよみがえってきています。

 日本から激辛好きの友人が来た折には、この焼きそばを食べさせて悲鳴を上げるのを見て楽しんでいました。驚いた事に、この友人は帰国する前夜の夕食にはチリガーリックヌードルを食べたいと言ってきました。なんでも、この焼きそばは彼がそれまで食べた激辛料理のトップ3に入ると言って再度挑戦したのですが、やはりまた泣いていました。この料理は必ず注文するのですが、最後の〆に注文しないで、最初に注文してしまうと後の料理の味が全く分からなくなるのが欠点です。20歳代最後の頃にマレーシアに駐在していた時にグリーンチリの酢漬けを丸ごと食べた時にも涙が出てきて、味覚が無くなったけれど、チリガーリックヌードルの方が更に強烈です。初めてスリランカに行かれる方には、スリランカ料理を是非とも食べて頂きたいのですが、リピーターの方で激辛料理がこよなくお好きと言う方にはお薦めです。

 レストランで売られているミールボックス(テークアウトのお弁当のような物)にも懐かしい味がいくつかあります。市内のゴール道路沿いや、これと並行して走るディプリケーション道路沿いにあるレストランの脇でよく売っています。紙かプラスチックで出来た入れ物にご飯をよそってもらい、お皿に並べられた何種類かの料理から、好きなものを選んでご飯の周りに載せてもらうだけの物ですが、東南アジアによくある「ぶっかけ飯」のようで、これも懐かしい味の一つです。                     



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