ぼくが見て感じたスリランカ紹介70 クラモダヤ民族芸術センター (3) 前回、織物クラスの先生から教わったキャンディとアヌラダプラ、クルネガラを結ぶ三角地対帯に、さっそく出かけようと思いましたが、困った事に気が付きました。それは交通手段です。 この三角地帯は「文化のゴールデントライアングル」と呼ばれていて、スリランカを訪れる外国人観光客のほとんどがこの地域を目指して来ます。それだけに、宿泊施設は五つ星クラスのホテルからバックパッカー相手の安宿までそろっているので心配ありません。多くの観光客はコロンボの空港からエアコン付の観光バス等に乗って、この三角地帯の中を回ります。バックパッカーは鉄道や乗り合いバスを利用して回ります。ところが僕が考えている今回の手織り布(古布)探しの旅では、情報があれば三角地帯の中を縦横無尽に走り回らなくてはいけません。時間通りには来ない鉄道や、全く時間が当てにならないバスを待っているわけにはいきません。 そこで思いついたのがレンタカーです。ところが、やはり此処はスリランカ、簡単にはいきません。現在はどうか判りませんが、その当時は世界中の一寸した国なら何処にでもある、ハーツやバジェット等のレンタカー会社がスリランカにはありませんでした。コロンボ市内のホテルに当たっても、レンタカーは無く運転手つきのリムジンしかありません。友達にも聞いてみましたが、そもそもレンタカーというビジネス形態が判らないようです。何人かの友達は自分の車を貸してくれると申し出てくれました。でも、朝夕には自分の子供たちの学校への送迎、日中は商品の配達等車が無ければその日の稼ぎが無くなるような商売をしている人達である事は判っています。善意はありがたいのですが、それを受けるわけにはいきません。 そうこうしているうちに、一人の友人が中古車屋と交渉してくれて、僕がいったん車を購入し返却時に走行距離を加味して売却する、という話がまとまりました。ただし、保険がありません。これは相当にリスクがあります。更に、田舎で死亡事故を起こすとその場でリンチされてしまう等、色々と怖い話を聞かされました。今回は付き合ってくれる様な暇な友人が見つからないので、一人で慎重に運転する他には術がありません。一人という事は運転だけでなく、通訳がいないという事です。果たして、シンハラ語が話せない僕だけで、充分に探している古布の事を説明できるか不安でした。また、古布の話だけに年配の方から話を聞く必要があるのに、通訳無しで意思の疎通が出来るのか不安でした。こうなると得意の出たところ勝負です。出発の前にコロンボにある国立博物館に行って、古布の端切れを再確認し、このような端切れでも良いので、何とか手に入れたいと思いました。 先ずは、キャンディを目指して出発です。これまでは立ち寄った事が無いアンティックショップを一軒一軒覗いていく作戦です。キャンディロード沿いにはかなりの数のショップがあると目論んでいたのですが、意外な事にあまり数が有りません。象の孤児院のあるケガッラの町の郊外には何軒かのショップが固まってありましたが、此処でも収穫ゼロです。古い家具や農具、真鍮製品、木工製品、古銭などは何処の店にもあるのですが、肝心の古布が見つかりません。古布を探していると尋ねると、「有るよ」と言って店の奥から持ち出してくるのは比較的新しいバティックばかりです。手織りの古布だと言っても、なんでそんな古い物を探すのか、このバティックは値打ち物だからこれを買えといった会話に終始します。此処まではアンティックショップと看板は出ているものの、半ばお土産物屋の様な店ばかりだったので仕方がありません。この先もキャンディまでは収穫がありませんでした。 ペラデニヤを過ぎてキャンディの入口に近づくと、宝石屋やお土産物屋の数にはかないませんがアンティックショップの数も増えてきました。さすがにシンハラ王朝終焉の地です。これまで同様に古い家具もありますが、祭事に使ったと思われる器具等も店先にあります。ペラハラ祭りで貴族達が着用していたと思われる衣装をあるではありませんか。これはビンゴかと思ったのですが、店員さんに聞いてみると、30〜40年位前のものだそうです、残念!古布は有るかと聞いてみても、此処までと同様に何でそんな物が欲しいのか、店先にある物を買っていけという対応です。 キャンディの町中に入って同様です。コロニアルスタイルで有名なクイーンズホテルの周辺やキャンディ駅の周辺にアンティックショップが集まっていますが、いかにも観光客相手の品揃えで、肝心の物がありません。アンティックショップ以外の店と思い、試しにサリーの専門店で聞いてみましたが、古布どころか店に置いてあるサリーのうち上等なものはインド製だそうで、お土産に買っていけと相当にしつこく迫られました。キャンディはスリランカ最大の観光地なので観光客相手の店が大半のようです。キャンディで古布を探すのは諦めて、アヌラダプラを目指して北上する事にしました。(続く) 僕が見て感じたスリランカ・目次へ TOPへ |
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