ぼくが見て感じたスリランカ紹介81

                            象の孤児院U
      

 ピンナワラにある「象の孤児院(Elephant’s Orphanage)」は、1975年にスリランカ政府野生生物保護局によって、マハオヤ川沿いにある10万u程のココナツ椰子の林を切り拓いて設立されました。

 親を亡くしたり、迷子になったり、親が育児放棄をした子象や、失明等の障害や怪我で野生に戻れなくなった成人の象を保護している施設です。当初は50頭ほどでしたが、2011年現在、88頭の象達が保護されています。

 スリランカの野生の象は約3000頭と推定されているので、約3%の象が此処で保護されている勘定になります。象の孤児院で生育された子象達の中で、人に馴れたり性格のおとなしい象は、寺院や象使い等に引き取られて行きます。何頭かはお金持ちに引き取られるのでしょうね。野生の象は群れを作って集団生活をしているので、此処で生育した象は、新たには群れに入れない為です。

 象の孤児院には二大イベントがあります。一つは子象達へのミルクの授乳。4歳以下の子象には1日5回ミルクが与えられます。この内9:15と13:15の2回が公開されています。僕も何度か見ましたが、特大サイズの哺乳瓶から凄い勢いでミルクをむさぼるように飲む姿は迫力と共に愛らしいものです。希望者は哺乳瓶をもって授乳する事が出来ます。

 もう一つは川での水浴び。上記のミルク授乳時間のあと一休みして、10時〜12時と14時〜16時の2回行われます。象使い達に連れられて、丘の上にある孤児院からマハオヤ川までの数百メートルの間、道路を渡り、お土産物屋とレストランが林立する商店街を、土埃をたてて小走りに駆け抜けます。沿道にはたくさんの外国人観光客と共にスリランカ人の観光客も大勢詰めかけて、象の行進に見入っています。スリランカ人にとっても一度に100頭近い象を見られる機会は此処だけですからね。

下世話な話ですが、象の孤児院の入場料は2013年現在、外国人の大人が一人2000ルピーとかなり高額です。僕が住んで居た1990年代は外国人の大人一人60ルピーだったので、他の物価上昇率と比べても雲泥の差ですね。これに対してスリランカ人の入場料は、1990年代は10ルピー、現在は200ルピーと外国人の十分の一とかなり低く設定されています。(外国人でも居住ビザを提示すればスリランカ人の料金で入れますが)。

 象が川に到着すると、象使いは先ずは椰子の殻を使って、象の体をゴシゴシと洗ってあげます。象達は気持ちよさそうに、川床に横たわって体を洗ってもらいます。体を洗ってもらった後は、大きな体を水中に沈めて長い鼻を潜望鏡の様に水面に突き出してみたり、子象同士がじゃれて水を掛け合ったりして、川での水遊びを満喫します。その姿を観光客は川岸や、川沿いにあるレストランの桟敷席で食事を摂りながら見物しています。

 2時間の川遊びが終わると象達は、象使いに連れられて孤児院に帰って行きます。来る時とは違って、川から離れるのを嫌がって歩みが遅いように、僕には感じられました。感心するのは、行きも帰りも大人の象が子象を外敵から守るように、大人たちの間に子象を挟んで行進する事です。孤児院だけに、それぞれの象に親子関係は無いのですが、それでも大人の象は子象を守り抜きます。

 ツアーで行かれた方は、時間の都合で二大イベントの両方を見る事さえ難しい事と思いますが、実は二大イベントの他にも、是非とも見てもらいたい事があります。先ずは、象の食事風景です。象使いがビックリするほど多くの葉っぱや小枝、太目の木材を食事場所に運んできます。象は器用に鼻を使って葉っぱや小枝を纏めて口に運びます。此処までは日本の動物園でも見る事が出来ますが、太目の材木の食べ方に注目です。

 先ずは足で踏んでひび割れを作ります。それぞれの象に好みの大きさがあるのでしょう。ひび割れに牙の先を突っ込んで細かく砕いて咀嚼を始めます。言葉に書くと長いですが、この作業を瞬時に行うので驚きます。子象達はミルクを貰っているのでこの場所では食事をしませんが、じっと大人たちの仕草を見ています。そろそろミルクを卒業して、大人の食事をする勉強をしているのでしょうね。

 もう一つ見て頂きたいのは、二大イベントの間に象達が寛いでいる様子です。孤児院の広大な敷地のなかで、象達は好みの場所で日向ぼっこをしたり、土を被ったりしています。イベントの時に見せる姿とは違って見えます。僕は、川遊びの時の象の姿も好きですが、寛いでいる様子も大好きです。個人旅行でスリランカに行かれる機会のある方は、是非とも半日、象の孤児院でお過ごしください。




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