ぼくが見て感じたスリランカ紹介83

                       竹馬に乗った釣師

      

 スリランカは日本と同様に四方を海に囲まれた島国です。この海には豊潤な海の幸があり、スリランカの人達の栄養源となり食欲を満たしています。今回は、これらの魚を捕る伝統的な漁法の一つを紹介しようと思います。その漁法の名前はストルト・フィッシング(Stilt Fishing)と云います。スリランカ南海岸の風物詩と呼ばれています。Stiltは竹馬という意味で、直訳すれば竹馬釣りになります。さて、みなさんは竹馬釣りという言葉から、どのような魚法を想像されるでしょうか?

 大海原で竹馬を駆って魚を網に追い込むような、勇猛果敢な漁法を想像された方もいらっしゃる事でしょう。ところが、この漁法を先祖代々引き継いできた漁師達はノンビリ屋のスリランカの人達です。竹馬を駆って行う、このような積極的な漁法は思いつかなかったのでしょう。ストルト・フィッシングでは、先ず竹馬となる一本の棒を探す事から始めます。この棒は長い程良いのだそうです。棒が見つかったら後は簡単、海岸より少し沖合に出て、ここぞと思った場所に棒を突き立て、足元を石等で固定させるだけです。そして、腰を乗せる台と足を乗せる台を付ければ準備完了です。漁船や漁網を購入する資金もいらないし、海が荒れて設置してあった棒が流されても、もう一度棒を立てれば良いだけなので、漁師にとっては都合の良い漁法なのでしょう。

 漁師達はあまり暑くならない朝と夕方に、釣竿を持って自分の棒がある場所まで海中を歩いて行きます。棒に登って台に座ると、魚が来るのをひたすら待ちます。ただ待つだけで,撒き餌を行う等の魚を呼び寄せる積極的な行動はしようとしません。する事といったら、同じように周囲の棒に座っている漁師仲間と話をする事ぐらいでしょうか。長い棒であるほど沖合に立てる事が出来るので、他の漁師よりは早く魚を見つける事が出来るので有利なようです。さて、魚が自分の棒の近くに来ると、釣竿を振って針で魚を引っ掛けます。針に餌をつけて釣るのではありません。ただ近くに来た魚を引っ掛けるだけです。果たして、針で魚を引っ掛けるだけの事を漁法と呼んで良いのかは判りませんが、この場所に連れて行ってくれたウダヤ君に聞いてみると、魚は思いのほかよく釣れるそうです。スリランカらしいと言えばその通りの漁法ですね。

 何とも不思議な漁法ですが、確かに先祖代々この魚法で家族を養って来たのだから、これはこれで立派な漁法なのでしょう。しかも、いっぺんに大量の魚を捕る事はできません。無意識のうちに乱獲をしないで資源保護をして来たことも、自然と共に生きて来たスリランカの人達らしい漁法です。しかも、撒き餌を行わないので、食べ残しが海底に沈殿する事も有りません。

 ストルト・フィッシングは、スリランカにも大きな被害をもたらした2004年12月のスマトラ島沖大地震&大津波以前はヒッカドゥワからマータラまでの南海岸一帯で見られましたが、現在ではストルト・フィッシングを行う漁師の数は減ったそうです。これは大津波の後で漁業を続ける事を諦めた漁師が多かったのが原因だと思われます。さらに、海外からの援助物資の中に、近代的な漁船・漁網等も含まれていた為に、漁船の船員に鞍替えした漁師もいた様です。それでも、ゴールから東へ30Kmほどのところにあるウェリガマという小さな町の周辺では、今でもストルト・フィッシングが行われています。

 僕がスリランカに住んでいた頃から言われていた事ですが、ストルト・フィッシングを行っている漁師の中には悪質な人もいます。僕自身は見た事は有りませんが、外国人観光客が棒に取り付けた台に座って、漁をしているところを写真に撮ると、チップを要求してくる漁師がいるのだそうです。多分、最初の内は観光客がお礼にと思ってチップを渡していたのでしょうが、もらう側は簡単に現金を得る事が出来るので習性化したのでしょうね。最近ではチップ目当てに、魚を釣るフリだけをしている輩もいるそうですから、ストルト・フィッシングの見学に行かれる方はご注意下さい。

 ウェリガマにはもう一つの名所があります。町の西側沖合にあるタプロベーン(Taprobane)と呼ばれる小さな島です。島には植民地時代に立てられた瀟洒な邸宅があり、10年程前までは個人所有の住まいでしたが、その後改修されて現在では5部屋だけの小さなホテルとして営業しています。植民地時代と変わらない、砂浜と青い空、赤い屋根と白壁の邸宅を見ているとタイムスリップした気分になりますよ。写真を写すにも最適な場所の一つです。干潮時には砂州ができて海岸から歩いて渡る事が出来ますが、残念ながら宿泊客しか島に立ち入る事は許されていません。一層の事、このホテルに泊まってストルト・フィッシングの見学に出かけるのも面白いですね。

 「Stilt Fishing」で検索すると、動画や写真をたくさん見つける事が出来ます。タプロベーンについては、「Taprobane Island」又は「Villa Taprobane」で検索して下さい。良い旅を!


      
(掲載写真:スリランカ ウィキペディア より)



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