ぼくが見て感じたスリランカ紹介80

                            象の孤児院
      

 コロンボからキャンディに向かって国道1号線を車で走ると、キャンディの手前30kmほどの処にキャーガッラという町があります。この町の郊外の、ピンナワラというところに象の孤児院(Elephant's Orphanage)があります。この町の郊外、ピンナワラに「象の孤児院(Elephant's Orphanage)」があります。2013年3月号の「路上であった動物達」で少しだけ触れましたが、今回はこの孤児院を紹介します。

 最初にスリランカにおける象と人との関係を説明しましょう。20〜30年前までは、象使いに飼われて林業や農業の現場で働かされている象が多くいましたが、現在では象使いに飼われている象の数はかなり減っています。僕がスリランカに住んで居たのはほぼ20年前になります。

 この頃には、コロンボの町中を象が歩いている姿を見かける事は有りませんでしたが、ちょっと郊外に出れば鼻を使って器用に丸太等を運んでいる象をよく見かけました。それも、道路の端を歩くのではなく、象使いに連れられて道路の真ん中をゆっくりゆっくりと歩いていました。もっとも、道路の端を歩いたら、うっかりすれば人を踏みつけてしまうからかもしれません。まるで象にはゆっくり歩く特権があるかのように、後ろにどんなに渋滞ができてもお構いなしにです。また、それが許されるような雰囲気がスリランカの人の間にはありました。

 特定の場所で働いている象もいたし、町の便利屋さんの様に何か力仕事があると、象使いに助っ人を頼んで家や現場に来てもらっていました。郊外にでれば象をよく見かけたと書きましたが、昔に比べれば見かける機会は減っていたようで、象が歩いていると民家や商店から人が出てきて、見物したり食べ物をあたえたりしているのも見かけました

 現在では寺院や個人の家で飼われている象が多くなっているようです。お金持ちになって、大きな家を持ったり、外国製の高級車に乗ったりするのと同じように、象の個人オーナーになる事を夢見ている人も少なからずいるそうです。ただし、象のオーナーになるという事は結構大変な事で、寺院では寄進物で賄えますが、1日に数十キロの餌(主に葉っぱや細い樹木)を確保し、それだけ食べれば出る物も沢山出るので、その始末もしなくてはなりません。象は水浴びが大好きなので水浴び場も必要になります。こうなると、象の世話をする専任の人も雇わなければいけません。かなりの手間と費用が掛かるのに、なぜ寺院や個人が象を飼うかと言えば、僕はペラヘラ祭りの存在が大きいと思っています。

 寄り道になってしまいますが、ペラヘラ祭りと象について説明しておきましょう。ペラヘラは「行列して歩く」というのが語源で、キャンディで7月〜8月にかけて2週間に亘って行われるペラヘラ祭りが有名で、これがペラヘラ祭りと思われている方も多くいます。
 実はキャンディの他でも、各地の寺院で規模の大小はありますが、ペラへラ祭りが行われています。キャンディのペラヘラ祭りを例にとると、先導には鞭で地面を叩いて地の霊を鎮める鞭打ち隊、次に旗持ち、楽隊等が続きます。列の中盤には多数のキャンディアンダンスの踊り手が乱舞しながら続きます。そして行列の花形は、仏歯寺のご神体である仏陀の歯が入った黄金の祠を背中に乗せて運ぶ、絢爛豪華な衣装を纏った象です。

 この象の前後に衣装を纏った沢山の象が行列を作ります。キャンディのペラヘラ祭り同様に各地で行われる行列の中心にはご神体を運ぶ象と、前後に繋がる象がいます。そして、ご神体をのせる象はその寺院が飼育している象が務める事が多いのですが、前後の象はその度毎に集められます。これに参加する事が象の個人オーナーにとって至上の喜びになります。ペラヘラ祭りの時期になると、象使いに連れられて祭りの開催地を目指して、道路をノンビリと歩いて行く象を見かける事があります。最近では象をトラックに乗せて移動する姿も多く見るようになって来ました。地方のペラヘラ祭りに参加して経験を重ね、電飾でギラギラした衣装にも慣れ、楽隊の音にも慣れ、たくさんの観衆に慣れてくると、地元だけでなく少し規模の大きなペラヘラ祭りにも参加要請がくるようになります。

 最終的にはキャンディのペラヘラ祭りに参加要請される事が最大の喜びになります。でも実際にはキャンディ等の有名なペラヘラ祭りに参加できるのは、何代にも亘って世襲で象使いを務めている人によって調教された象に限られるようです。それでも個人オーナー達は近隣で開催されるペラヘラ祭りに参加し続けて経験を重ねていきます。これは自分が金持ちだと誇るよりは、神事に参加できるようになれたと誇っているように僕は感じています。

 すみません、寄り道が長すぎて象の孤児院までたどり着けませんでした。次号に譲ります。(続く)

【ご紹介】「アスティーさんの旅行記 スリランカ」
http://4travel.jp/travelogue/10501695
世界で一番盛り上がるのは何祭り!?INスリランカ 〜ペラヘラ祭り〜

 ペラヘラ祭りに興味のある方はどうぞご覧下さい。この旅行記の文末にあるリンク先にもスリランカを紹介している写真がたくさん掲載されています。




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