アフリカとの出会い26 「死が身近にある社会
   

竹田悦子 アフリカンコネクション


 ケニアから帰国し早や6年が経った。私がそこで見たのは人々の生活ぶりとその貧困だ。ケニアの人々の暮らしを向上させたいという思いから関わった孤児院では、仕事をしながら「どうすれば暮らしを向上させらるのか?「何をすれば今この目の前にいる人を助けてあげられるのか?」ということばかり考えていた。

 今はもう孤児院の子供達に会うことはなく、連絡もとりあっていない。しかし、いろいろな記憶が曖昧になった今でも、何十人もいた子供達みんなのこと、子供達が抱えていた問題をいつも思い出してしまう。もちろん私がいても、いなくても問題は残る。学校のこと。家のこと。病気のこと。ほとんどはお金がない、お金を稼ぐ手段がない、低賃金過ぎるといった経済的な問題からきている。

 小さな体で、大人と同じような問題を抱えて生きていた子供達。笑顔の裏に、元気に遊ぶ姿の中に、彼らの苦しみや悲しみを思うとき、「生きるということ」はそれだけでもう十分恵まれていて、十分尊いことであると私は十分に教えてもらった。私が孤児院で仕事をしていた間にも孤児院の子供が一人病死しているし、知り合いの家族となると人はどんどん死んでいっていた。「死が身近にある」社会・・・。

 私がいたナイロビに近い都市部でも、農村部でも変わらない。6年前に撮った写真を見ると、私が直接知っている人たちの、実に3人の人が亡くなっている。病死である。糖尿病、HIV、心臓病。日本で治療を受けたならば助かっていたかもしれない。たいていは治療費を家族も払えず、親戚などの寄付で死後賄われる。

 先日、夫の実家の隣に住んでいた家族のお母さんが病死したと聞いた。悲しみにくれる旦那さんが電話をくれ、残された3人の子供と頑張っていくと話していた。たった数年でも、こうして人は死んでいく。

 5月の下旬から3日間行われたアフリカ開発会議にアフリカの首脳陣が横浜に集まった。日本がアフリカをビジネス・投資先と考える画期的な会議になってほしいと思う。併せてアフリカの人々が安心して暮らせる経済力をつけることに力を貸してもらいたいと思う。いつか「死が身近ではないように」。



                アフリカとの出会い目次へ        トップへ