媛媛来信 21                   春の話

今年も2月4日は立春の日でした。

 立春になれば、冬が過ぎ、春が来たと思われますが、中国の北方地域はまだ寒い時期です。農業を中心としている中国では、立春が一年間の農事を始める重要な節気で、古来最も重んじられ、色々な盛大な祭りが行われたのです。

 民間では「立春」に関わるざまざまな言葉も伝われています。「迎春」、「報春」、[打春]、「咬春」、「探春」などなどがそうです。これらの言葉から昔の人々が春を迎える喜びの様子が伺えます。

◆「迎春」 昔の重要な祭りで、天子から庶民まで参加します。周の時代、立春の日に、天子自ら三公、九卿、諸侯、大夫を率いて、東の郊外に行き、東の神である、春のことを司る句芒神を迎え、一年の豊穣を祈ります。

◆「報春」 立春はいつも旧暦のお正月前後になります。この時期になりますと、民間では「春官」という役に扮装した人が、春に関する言葉や、目出度い言葉を歌にしたり、赤い紙に書いたりして、各家々に行き、歌いながら、赤い紙を差し上げて、春が来た喜びを伝えます。

◆「打春」 周の時代に、泥の牛を以って、寒気を払うという冬の行事があったそうですが、漢の時代から、この行事は立春の日に行われるようになりました。土牛を春牛と言い、人々は牛を綺麗に飾り、牛に向かって礼をし、それから鞭で叩きます。それが「鞭春」「打春」のいわれで、耕作が始まるという意味なのです。

◆「咬春」 昔から立春の頃、蘿蔔(大根)、韮、芹など辛味の生野菜を食べる風習があります。それを「咬春」と言います。春風や、野草と野菜の生命力を身に受け、病疫を払い、体の健康を願うと考えられます。今、私たちは立春の日に春巻、春餅といって、炒めた野菜を薄いお餅で巻いて食べる習慣がありますが、「咬春」の風習の名残と言っても良いしょう。

◆「探春」 長い冬で閉じこもられた人々は、春光溢れる春の日に、家族同士あるいは友人同士がお互いに誘い合い、郊外へ行って、鼻で春の空気を呼吸し、目で春の景色を楽しみ、肌で春の気配を身体全体で感じ喜び合います。

 以上のような春に関わる風俗は、いまも様々の形で民間に伝えられています。この世界に活力と生命力を与えてくれる春に対して、人はいつまでも感謝の心を忘れずにいることでしょう。