媛媛来信 1 (2004年)

 月日の経つのは、なかなか早いですね、あっという間にまた年末になってしまいました。スーパーでも、お正月用品が色々並び始めました。お正月で一番目に付くのは綺麗に飾られた様々な門松です。門松は、日本のお正月に欠かせない飾り物ですが、中国でのお正月のシンボルは「春聯」です。

 皆さんもご存知のように、春聨は、中国の旧暦のお正月(春節)に玄関の両側に貼られる、目出度い対句を書いた赤い紙です。中国文学の独特な形式の一つといえるでしょう。

 お正月に「春聯」を貼るのが、何時から始まったのかはまだはっきりしていませんが、千年前の漢の時代では、「桃符」と呼ばれる魔よけが使われており、「桃符」は「春聯」の原始的な形といえます。

 古い言い伝えがあります。東の海上に、鬼の住む山がありました。そして、その山には鬼のお城があり、その城門のすぐ傍にとっても大きい桃の木がありました。神茶、郁 亝 という腕っ節の強い兄弟は、鬼をよく成敗し、年末には城門の両側に立って、悪いことをしている鬼を見つけると、葦縄で縛り、虎に食べさせました。それは、お百姓を喜ばせましたが、しかし、悪鬼は大変多く、兄弟二人だけで家々を守るのはとても無理でした。そんな訳で、桃の木で神茶、郁 亝二兄弟の像を彫り、大晦日の日に葦縄と一緒に玄関に掛けるようになりました。けれども、像を彫る事も大変ですし、難しいというので、ついに兄弟の絵と名前だけを桃の木に書くようになったということです。それが「桃符」のいわれです。

 宋の時代,人々は、桃の木の板に目出度い言葉を書き始めました。桃の木による魔よけの意味もありますし、美しい願い託すという気持ちもあります。そして、その後次第に赤い紙に対句を書いて貼るように移り変わってきました。

 この物語の桃の木と、葦縄は私の興味をそそります。というのは、日本の民話の「桃太郎」と、神社や、お正月飾りでよく見かける注連縄を思い浮かべるからです。鬼退治をした「桃太郎」と「桃の木」や「神茶、郁 亝」、「魔よけ」の力があるといわれる「葦縄」と「注連縄」、その中にどうやら共通するものがあるのではないかと思われます。

媛媛来信20 春聯の話