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媛媛講故事―78

怪異シリーズ 47         狐の乱          


 昔のことでした。

 ある村に周甲という農民がいました。妻がとても強い女で、周甲は妻からたびたび暴力を振われました。

 ある日の夜、つまらないことで妻の機嫌を損ねた周甲は、妻から殴られたり蹴られたりなどの暴力を振るわれ、とうとう耐えられなくなって、妻が熟睡している間に、荒れ果てた村の廟に逃げ込んで隠れました。夜が明けたら友人に仲介を頼んで妻に許しを乞おうと思っていました。ところが、朝になって目を覚ました妻は、周甲のいるところを察して廟へやってきました。そして廟の神像に向かって、周甲の罪を数え上げた後、周甲を叱りつけて周甲の背中を鞭で打ちました。

 実は、この廟や周辺には多数の狐たちが住み着いていました。周甲は十何回も妻に鞭打たれると、その痛さで泣き叫んだので、周甲の悲鳴を聞きつけた雄の狐たちががやがやと現れて二人の周りを取り囲みました。そして、周甲を妻の手から奪いとると垣根の隅に連れて行き、妻に向かって言いました。

 「世の中にこんな不公平なことがあってたまるか!」

 雄の狐たちは周甲の妻を捕らえると素っ裸にして鞭打ち始め、血が流れても許そうとしませんでした。

 と、突然雌の狐たちががやがやと現れました。

 「男どもは、周甲が男だから周甲の肩を持ってるんじゃないの。この男は妻に背いて他所の女とこっそり良い仲になってるんだ。女として許されないじゃないか。死んだっていいくらいのもんだ」

 雌の狐たちはそう言うと、雄の狐達から妻を奪い取り垣根の隅に連れて行き、周甲を捕らえようとしました。雌雄の狐達がそれぞれを救おうと対戦になり、大変な騒ぎが続きました。

 村の畑の監視員が廟の騒ぎを聞きつけ、さては泥棒が騒いでいると思い込み銃声で威嚇しました。狐達は驚いてすぐさま逃げてしまいました。

 妻はぐったりしたままでしたので、周甲は彼女を背負って、こけつ、まろびつ、喘ぎつつ家に帰りました。妻は帰る途中でも、周甲の背中でぶつぶつ夫を怒鳴りつけているのが隣人達に聞こえました。                  

                                                            (終わり)




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