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  媛媛講故事―77

怪異シリーズ 46             白狐」V          


 しかし、思ってもみなかったことに、都で彼を待っていたのは牢獄でし。 柳は都に入ると、そのまま捉えられ、殺人犯として監獄に投げ入れられました。
  
 考えてみれば自分は妻を毒殺したのですから殺人犯に間違いありません。牢獄に投げ込まれるのは当然のことです。しかし、納得がゆかないのは、彼の罪名は「皇妃殺しの罪」だというのです。 柳は事情が呑み込めません。鈴児は確かに自分の手で殺しました。けれど鈴児以外に人を殺したことなど全くありません。若しかしたら鈴児は皇妃なのでしょうか。しかし、誰も詳しいことは説明してくれないままでした。

 ところがある日柳は意外なことに柳と同じ囚人服を着ている秦槐に出会いました。秦槐は柳を見かけると顔に薄笑いを浮かべて言いました。

 「早かったね。君ももうここに入ったんだね」

 柳はこの時突然「この人間こそ自分が知らないところで何か悪い企みをしていたのではないか」と気が付きました。

 「秦槐、君はどうしてここに収容されたのか。君も何か悪いことをしたのか。私を見てそんな嬉しそうな顔をするのは一体どうしてなのか。若しかしたら君は私に妻を殺させようと狙っていたのか?」

 「教えてやろうか。実は私の義父は国の宰相である秦渭だよ。残念ながら、彼は悪いことをやり続けていたがそれが発覚して、つい最近罷免されて俺も巻き込まれたのだ。君の事といえば、実は、初めて都で試験を受けた時、第一位は君で、俺が第二位だった。義父は君が志の大きい、辣腕で優秀な人材だと評価した。しかし、義父が思うには、もし私たち二人が共に朝廷に入ったら、俺は君にはとても勝てそうもない。いやそれどころか、君はむしろ俺の出世の障碍になるに違いない。それで義父は君の答案用紙を成績の芳しくない者と差し替えた。結局、君も知っての通り、俺が第一位になって君は落第した。その後も君は何回も落ちたが、その訳は同じ理由だ。もう分かったかね」

 柳は秦槐の話を聞いて初めて、自分がなかなか試験に合格できなかった訳がはっきりしました。 柳は怒りと悲しみで壁を叩きながら秦槐を問い詰めました。

 「それにしても、私の妻は何も罪がないのに、どうして殺させたのだ」

 「それにも君が知らない理由があった。実は君の妻は前皇帝の皇妃だった。知っていると思うが、皇帝がなくなると皇妃たちは皇帝と共に埋葬されるというのが後宮の決まりじゃないか。しかし、皇妃である彼女は決まりを破って姿をくらましてしまった。俺は朝廷の命令で密かに何年も彼女を探してきた。が、こともあろうに君の家にいると分かった。君はまだ出世の志望を捨てずに一所懸命頑張っていると知り、私は一石二鳥の策を練った。その方法なら自分の手で人を殺さなくて済むのだ。どうだい? これで全てはっきりしたか」

 柳は秦槐の話をここまで聞くと、身体から力が抜けたように床に倒れてしまいました。

 半月後、奸臣の秦渭、秦槐は裁判の結果、共に死罪になったという噂が聞こえて来ました。 それから間もなく皇帝より柳に対しても、

 「皇妃は、皇室の決まりにより死罪に相当するものであるが、民間人である柳が犯した殺人の罪を免ずることはできない。まして自分の妻を殺害するなどという罪は許されようもない」

 と死罪が言い渡されました。


 その後、秦槐は確かに処刑されました。しかし、柳は死んでいないという噂が町中で聞かれました。 柳が処刑される間際に、白い狐が現れ、一瞬のうちに柳を銜えて去ったというのです。                         (終わり)


イラスト:満柏










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