「日朝関係の克服 ―なぜ国交正常化交渉が必要なのか」

                          姜尚中著   集英社新書 


 第二回ワールド・ベースボール・クラッシックで5回も戦ったお隣韓国。韓国の報道や韓国選手の行動で「あれ?やっぱり韓国って日本のこと嫌い?」と思われるシーンがいくつかあった。

 WBCのように、野球に興味ある人もない人も、子どもも若者も中高年も高齢者も、国際社会に関心がある人もそうでない人も注目する場で、そのようなシーンを見かけると、なんだかとっても寂しい気持ちになる。

 そんな時期にこの本を読んで、韓国も北朝鮮も日本のことが嫌いなんだと改めて思う。

 理由は植民地支配のことだけではない。朝鮮半島が南北分裂したきっかけにはあの戦争があり、日本は分裂の原因の一旦を担っている側面もある。さらに同じ民族で争った朝鮮戦争の影では、その軍事的な特需で日本が経済復興を遂げたという事実がある。韓国・北朝鮮にとっては、南北分裂という現実はずっと続いており、「過去のこと」は「現在のこと」でもある。もしかしたら、日本はその認識がとっても甘くて、知らずに韓国や北朝鮮の人たちの気持ちを逆なでしているのかもしれない。

  一方、日本では拉致問題が未解決のまま横たわっている。著者の姜氏の主張は一貫している。拉致問題を解決するためにも、日本は北朝鮮と国交を正常化するべきだと、姜氏は繰り返し述べる。北朝鮮が拉致を認めたことは大きな譲歩であり、日本はそれに対して怒りではなく、北朝鮮との関係改善の姿勢で望まなければならないと著者は言う。

 姜氏の主張は頭では理解できるが、感情面で納得できない。しかし、にらめっこをしている間に関係がどんどん悪化し、「ありえない」と思っていた9.11のような事件がすぐ側で起きてしまったとしたら。益々、私たちは北朝鮮を許せなくなってしまう。負の連鎖はさらに続いていくだろう。

 もしかしたら、今がラストチャンスかもしれない。お互いが許し合わなければ、負の連鎖がずっと続いていく。どこかで「怒り」を乗り越え、「日朝関係の克服」をしなければいけないのだとすれば、早いに越したことはない。

                 (真中智子)



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