中国を読む60(番外編) TBSテレビ「報道の魂」を見て

  京劇俳優・張紹成氏の活躍を追うTBS番組「報道の魂」(2009年3月16日(月)0:50〜1:20放映)


  テレビが大好きな同居人と暮らし始めて、つい最近テレビ放送の録画を覚えた。使い始めると便利なものである。おかげで、わんりぃから紹介メールを頂いた番組を観られる。

今回、メーリングリストで紹介されていたのはTBS「報道の魂」(3月16日(月) 0:50〜1:20 放映) 。日本で京劇に真摯に取り組まれている張紹成さんの活躍を追ったものだ。

 張さんのことを、残念ながら私は存じ上げない。放送された情報がすべてだが、それによれば、客がいなくても給与の支払われる「国が管理する京劇自体のあり方」に疑問を感じ、あえて日本に渡った骨のあるエリート京劇俳優だ。

 日本での活動は地道だ。衣装係もなく、効果音の録音などやれることはすべて自分でする。飲み会では、仲間が張さんのことを評して「ちょっとお金があると京劇のことに使ってしまう。だからこの人、貧乏なの」というようなことを話していた。国からの突然のスカウトで京劇を始めた少年は、文化大革命で多くが失われた京劇の伝統を繋ぐためにすべてを捧げる志士となった。

 京劇に限らず歌舞伎でも能でも伝統芸能を鑑賞するのは難しい。ある一定の「お約束事」を理解していないと、何も分からない。観客にも「勉強」が必要な伝統芸能だからこそ、観客と俳優が一体になったときには、その舞台自体も芸術へ昇華するのかもしれない。

 放送のなかで、京劇の立ち回り後、観客から絶妙のタイミングで「好(ハオ)!」と掛け声が上がるシーンがあった。「好(ハオ)!」は京劇の決まり文句ならぬ、決まり掛け声である。舞台を理解する観客のみが発する掛け声。日本の観客のなかにそのような理解者が出てきたことを思わせる、張さんの活動が光るワンシーンだ。

 ふとテレビに映っていた観客のなかに、田井さんがいた。わんりぃ主催の舞台だったのだ。(真中智子)


写真:京劇の舞台化粧の仕方を披露する張紹成氏(右)と殷秋瑞氏‘わんりぃ’主催:京劇わくわく講座より 
    撮影:百井謙子

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