「災害時の気持ちの備え」

                      

  女性の視点から考える災害支援について、講演会にでかけた。講師は、浅野幸子さん(早稲田大学「地域社会と危機管理研究所」客員研究員ほか)。東日本大震災で、実際に女性が置かれた状況から見えた課題を具体的に提示し、とても分かりやすい内容だった。

 まず、女性と男性で被災経験は異なる。この認識が、第一歩。例えば、女性は避難所で洗濯物が干せず、濡れた下着を身につけることで膀胱炎や膣炎などの病気を多発。人がいる前で着替えができないなど、衛生問題が男性より厳しい状況に陥る。また、生理用品や下着など、女性に必要な支援物資が届かない(届いても、物資管理者は男性が多く、配布方法が分からない)。暗い避難所で、女性や子どもへの性的暴力の不安も。妊娠期の方、乳幼児を抱えるお母さんはさらに大変だ。一方、経済力の担い手であることが多い男性は、生活や仕事のプレッシャーで鬱状態に。復興期には、少ない人手で、溜まっていた膨大な業務をこなさなければならず、過労死も増加する。

 困難は、知恵と工夫で軽減できる。例えば、女性更衣室、授乳室、女性専用洗濯物干し場の設置や、間仕切りの導入で、プライバシーは守られる。文京区では、大学と連携して、災害時の妊産婦、乳幼児専用避難所を設置する。いざというときは、大学の校舎が妊産婦、乳幼児親子専用の避難所となる。

 ただ、男女で被災経験が異なるという認識がないと、間仕切りの導入ひとつにしても、「一体感がなくなって助け合いの精神が失われる!」と、男性リーダーが反対し、見送られた事例も。女性更衣室や授乳室にしても、「場所がない」「昔は、人前でも授乳していた」など、理解がないと設置すら難しい。しんどいときだからこそ、お互いの困難を理解しあいたいところだが…。

 講師の提案は、平常時から自治会でも行政でも、男女一緒になって、災害時のルールづくりを行うことで、いざというときに、そのルールが生かされるという。例えば、「授乳室・女性更衣室を設置する」というルールをあらかじめ決めておくことで、周囲の理解を得やすいというのだ。

 なにより、女性であっても、そこまでの困難を想像できなかった私。ルールづくりに参画する機会は思い当たらないが、災害時にこそ、お互いの困難を理解する努力をしなければならない、という気持ちの備えをしておきたい。  (真中智子)


           
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