犯罪被害者集団によせて

                      

 11月25日から12月1日までを、内閣府では犯罪被害者週間としている。犯罪被害者が置かれている状況への理解を深めることが目的だ。昨年になるが、私は、ストーカーの男に娘を殺害されたご家族の話を聴きに行ったことがある。

 講演会場に現れたのは、被害者のお母さんだった。お酒が好きだと言い、いつまでも被害者だと思われるのは癪だから、毎日笑って過ごしている、心の底からではないけれど、と話す彼女は、とても感じのいい素敵な方だった。

 10年以上が経過していたが、被害者の女性と同じ年齢だったこともあり、私はこの事件をよく覚えていた。それでも、お母さんから聴く話は、テレビや新聞で得た情報をはるかに超えて、辛かった。
 先ほど、犯罪者被害者週間の説明に、「犯罪被害者が置かれている状況への理解」と書いた。つまり、犯罪被害者家族は、事件直後から好奇の目にさらされる、ということだ。

 この事件でも、マスコミが家のみならず、被害者の友達や知り合いにまで取材に訪れたという。なかには、「女の子ですから、高く売れますよ」と、写真を求めた関係者もいた。

 マスコミの影響で、家の場所はすぐに知られることとなり、知らない人が興味本位で覗きに来る。また、近所の人のなかには、挨拶を返してくれなくなったり、付き合いを拒絶する人も。「でも、だからこそ、今でもお付き合いをしてくれる人たちは、私たち家族の本当の友人です」と言う彼女は幾多の辛いことを経て、本当に強くなったのだと思う。興味本位で覗きに来られる家には、まだ住んでいるそうだ。「ずっとここに住むことで、事件を風化させないことになれば」と。

 先月、女子高生がストーカーの男に殺害された。あのとき壇上で、「こんな辛い事件は、絶対に繰り返されてはいけない」と話した彼女は、何を思うのだろうか。

                                                   (真中智子)


           
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