「五月病になりました」

                      

 久しぶりに、五月病になっている。社会人12年目になって、いまさら五月病である。

 4月に異動になった。前の部署は、人と関わることが多く、色々な人と出会えて楽しかった。新しい部署にきて1ヶ月半。社外の人と関わる機会も少なく、業務量ばかり多く、すっかり気分は滅入っている。

 ちょうど10年前に、やはり五月病になった。社会人2年目である。五月病は長引き、8月に会社を辞めた。溜まっていた有給を一度にとり、中国シルクロードのツアーに申し込んで、出かけた。カシュガルの真っ暗な夜に見上げたミルキーウェイが、胸に迫った。わずか1年半で会社を辞めることの後ろめたさや不安が一気に押し寄せてきて、いつかちゃんとした大人になりたいと思った。

 それから10年、仕事は誠実にこなしてきた。それが、ここにきての五月病である。35歳目前にして周囲を見ると、キャリア志向の友人は役職への階段を着実に上っており、家庭を持っている友人はきちんと子育てをしている。自分だけが、非正規労働を選んだまま、キャリアもなく、出産もせず、宙ぶらりんでいるような気がして、ならない。

 インターネットで「五月病」を検索してみると、新しい環境から来るストレスから、無気力感、不安感、焦りが生じる精神的な状態のことを言うらしい。いろいろなサイトを見ていると、どうも「頑張らなきゃ!」という思いがある人ほど、慣れない環境で空回りして、「五月病」になるようだ。

 そう、私は「五月病」なのだ。ある程度、失敗や、無気力感・不安感は仕方がない、しばらくは頑張らなくていい、と腹をくくってみた。職場で、ランチを食べながら「私、どうも五月病で…」とカミングアウトもしてみる。「私も、去年の同じ時期、そうだった」と、昨年、異動した同僚から返ってきた。自分だけじゃない。しばらく無理しないでやってみよう。夏はそのうちやってくる。                                                                (真中智子)


           
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